2017年06月11日号 03面

170426190802-0Z3A2094

 「口から出る言葉だけが、言葉ではない。香り、音楽、食事、建築も、しゃべる言葉以上に何かを語る。五感、全身の言葉を感じられる教会をつくりたいと思っています」。このような観点で都心での教会開拓を準備しているのが、「ブランド・ニュー・ライフ」代表の関智征さんだ。今年、準備イベントとしてブランド・ニュー・サロン「聖書×α」を定期的に開催する。第1回は、建築家で東京大学名誉教授の香山壽夫さんをトークゲストにして、4月26日に東京・中央区のロングライフホールディング株式会社東京本社で開いた8面に関連記事。【高橋良知

   ◇   ◇

 受付には、「ナルドの香油」の香りがただよい、会場では8弦ギターの演奏(池田宏里[ギタリスト])と朗読(中村啓子[ナレーター])、こだわりの弁当といった、五感を刺激するもてなしの工夫があった。建築関係者、教育関係者、アーティスト、牧師、経営者など様々な人々が集っていた。

 3つのテーマごとに聖書朗読、ギター演奏とトークは進行した。1つ目は「光」。創世記1章1〜3節、黙示録21章11〜23節が朗読された。

 香山さんは「人間の根本に自分を超えたものへの意識があり、その代表が光。形ある世界と、目に見えないものをつなぐものが光だった」と語った。「建築は、空間の芸術といわれる。空間そのものをいじることはできない。いじれるのは光だ。壁、屋根をどう建てて、光を反射させるか考えていきます」

 次は、「つくる」「選ぶ」というテーマ。コへレト(伝道者の書)3章1〜3節、マタイ13章29、30節が朗読された。「様々な仕事に通じると思うが、アイデアはたくさん出ても、選び、捨てることが難しい」と話した。「子育てとも似ている」と言う。「早く捨てすぎてはいけない。抱きしめてから突き放していかないといけない。『時がある』からだ」。「毒麦のたとえ」にも触れて、「建築には、論理的な部分と非論理的な部分がある。整理しすぎてしまうと、良いアイデアは死んでしまう。最初にいいと思うものは、常識的にいいから、いいと思える。初めにダメそうだ、と思ったものでも、後から見直すと、新しいものが生まれることもあります」

 3つ目のテーマは「美しさ」や「かたち」について。マタイ6章28、29節、ダニエル補遺(新共同訳続編)のアザルヤの賛歌を引用した。「美の絶対的な基準はない。だが、はちゃめちゃでいいというわけではない。個人が勝手にやれ、ということでは、表現は自己破滅する。他人と無関係では芸術にならない。『美はある』と信じるしかない。『ある』と言える証拠は人間の歴史、そして自然の美しさの中にある」と述べた。

 「かたち」にも触れて、「地上にある人間は『かたち』がなければ生きていけない。かたちには型と形がある。形になるといのちが入る。しかし、いのちを失えば、単なる型になってしまう」と説明。教会の在り方に触れて、「教会は人の集まりであり、建築ではない。使徒の時代には、教会堂はなかった。教会は単なる建物ではなく、つくる行為にある。共にあることで、いのちのなかったかたちに、いのちを与えることになる。建物は結果」と語った。

 質疑応答の中で、決断することについて語った。「特に公共建築では、市民の人々との話し合いの機会が多く、意見が様々に分かれることもある。しかし自分と違う意見から教わる大切な機会。だがいろんな意見を足して答えが出るわけではない。最後には、どこか見えないものに向かって、一人で問いかけ、決断しなければならないところがあります」

 さらに歴史を大切にする視点を語り、「多くの人が共感してきた判断は、単なる骨董、ブランドではない。いいと思った無数の人の列の最後に自分がいる。過去の人たちとも一緒に仕事をするという意識が大切。過去を無視していたらむしろ、つまらないものしか作れない」と述べた。

 同シリーズ第2回は「聖書×音楽」。6月16日午後7時15分から。「日本文化と福音」と題して、宣教師でオルガニストのロジャー・ラウザーさんを迎える。以降も福祉、医療、教育などのテーマで開催する。要申し込み。問い合わせはMail:brandnew0321@gmail.com、HP www.brandnewlife.jp