img4f94d6d8f16e2 血縁でなくとも、人と人は家族になれる。その喜びと労苦の日常生活が、児童養護施設の子どもたちの自然な振る舞いと彼らを親のように全人格的に受け止めようとする保育士をとおして見つめられている。人を’愛する’とは、このように無償のものであるから人の心を動かすことが胸に迫るように伝わってくる。

社会福祉法人光の子どもの家は、埼玉県にある小舎制(1舎につき12人までの児童)の児童養護施設で、本園3棟と借家屋2棟に40人ほどの子どもたちが入居している。聖書の「光の子どもらしく歩みなさい」(エペソ5章8節)から名付けられたこの施設の養育目標と生活を、刀川監督のカメラは8年の歳月をかけ空気のように溶け込んで映し出していく。

開所当時から勤めているマリコさんが担当しているのは、小学生のムツミとマリナ。1歳違いの2人は、何かとちょっかいを出し合い、時にはマリコさんを取り合う。お母さんに憧れる年代でもあり、マリコさんを「ママ」と呼んで甘え合ったりもする。

マキノさんが担当する小学生のマイカは、マキノさんに出会えて、心が安定してきた。だが、退職職員が出て、やむを得ずマキノさんは別の棟へ担当替えになる。マキノさんにしがみつき、泣きじゃくりながら激しく抵抗するマイカ。その様子を、じっと見つめていたムツミは、その夜「まり子さん大好き」をノートに何度も書きなぐる。ある日ムツミを引き取りたいと思い、母親が訪ねてきた。ムツミの気持ちは揺れ動くが、何かを決心する。

img4f94d6e24a973 光の子どもの家に預けられる子たちの事情は、育児放棄、親からの虐待そして両親を亡くした子など複雑多様だ。ここでは、1人の保育士が5人以内の子どもたちを責任担当制で育てていく努力を積み重ねている。本作では、そのすべての子たちと’隣る人’となる保育士、職員の姿を負っているわけではない。マリコさんが、ムツミ、マリナの’隣る人’となっていく毎日の生活、保育士としての仕事と覚悟にスポットが当てられる。それは、どこの家の家族にもつながる、親とは、子とは、家族とはの問いと在り方を考え求めていく姿にほかならない。

血縁の親がいても傍に居てもらえない子どもたち。血縁はなくても、子どもの心をそのまま受け止めて、傍に居続け、家族になろうとする「隣る人」たちが、今日も新しい日を子どもたちと一緒につくっていく。 【遠山清一】

監督:刀川和也 2011年/日本/85分/ 配給:アジアプレス・インターナショナル 2012年5月12日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

公式サイト:http://tonaru-hito.com