Movie「ひまわり-沖縄は忘れない、あの日の空を-」――53年前の墜落事故から沖縄基地問題の現実描く
2012年に沖縄は本土復帰から40周年を迎えた。だが、現在も日本の米軍基地の76%が沖縄県に集中し、海兵隊のオスプレイの普天間基地配置や新たな基地問題などを抱えている。53年前、石川市(現うるか市)宮森小学校と民家に炎上した米軍のジェット戦闘機が墜落した事故をモチーフに、被害を受けた住民の心の苦しみと基地があることの様々な問題と現実を住民の視線から描いていく。
退職し妻に先立たれて娘夫婦の家で暮らす山城良太(長塚京三)。所用でバスを待っていると、激しい爆音とともに米軍のヘリコプターが沖縄国際大学へ墜落した。不幸中の幸い、死傷者は出なかったが、良太は自分が小学6年生の時に経験した宮森小学校米軍機墜落事故の時のことを思い出していた。
戦後まだ沖縄がアメリカの信託統治下にあった1959年6月30日、石川市の宮森小学校校舎と民家に米軍のジェット戦闘機が機能不能になり墜落し、死者17人(小学生11人、住民6人)、重軽傷者210人、校舎および民家が全半焼する大惨事となった。良太は、転校してきたばかりのクラスメイト広子や可愛がっていた下級生の一平をこの事故で亡くしている。あの日の朝も青い空だった。
良太の孫・石嶺琉一(須賀健太)は、沖縄国際大学にヘリコプターが墜落した事故をきっかけに、大学のゼミで宮森小学校米軍機墜落事故について研究レポートを行なうことになった。だが、墜落事故の惨状を経験した良太は、自分も遺族らも深く心を痛め苦しんでいるため、琉一のレポート活動に協力しようとはしない。
琉一も恋人の城間加奈(能年玲奈)の父親が米軍基地で仕事をしていることから、レポート活動が進むにつれ気まずい関係になっていく。墜落事故を調べるうちに気付かずに過ごしてきた様々な基地の問題。啓発活動の一環として琉一たちゼミ仲間は、ピース・スカイコンサートの開催を決意する。だがキャンパス内には、いろいろな波紋が広がり、様々な問題が起きてくる。
避け得ない事故であっても、友や愛する人を助けられなかったことの自責の念、心の傷はいつまでも深く重い。現在も様々な事件や問題の原因となる沖縄の基地の存在。何もしない選択ではなく、何をするかの問いを持つためにも、’忘れてはいけない’ことを本土復帰40年を機に提示している。 【遠山清一】
監督:及川善弘 2012年/日本/110分/ 配給:ゴーゴービジュアル企画 2013年1月26日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
公式サイト:http://www.ggvp.net/himawari/