映画「ワン・デイ 悲しみが消えるまで」――妻を亡くした男と遊離魂の女との不思議な絆
この地上での絆が突然の事故で断ち切られる悲しみ。“なぜ”と問いかけても応答のない悩ましさをどこへも持って行き場のない哀しみ。夫婦、親子の愛情の隙間によどんでいたわだかまりと悩ましい心の傷を、妻を亡くした男と事故で昏睡状態にある女の遊離魂との不思議な絆が絡まっていた“なぜ”を解きほぐしていく。
【あらすじ】
最愛の妻を突然の事故で亡くした保険会社の課長イ・ガンス(キム・ナムギル)。まだ傷心と喪失感のただなかに在るが、どうにか会社の仕事に復帰した。すると、調査員代理の後輩が持て余している引き継ぐことになった。交通事故に遭ったタン・ミソ(チョン・ウヒ)という25歳の全盲の女性が約2カ月も昏睡したままの植物状態にある。グループ長の指示は、事故を起こした車を運転していたのが保険会社の社長の息子の友人だから何としても示談を成立させろという。タン・ミソは孤児で身寄りがいないためミソの親友ホジョン(パク・ヒボン)が代理人になっている。だが、ホジョンは保険会社が説得してきた示談に頑として応じない。
ホジョンと交渉しようとして追い返されたガンスは、タン・ミソのことを知るため彼女の病室を訪ねた。昏睡状態で寝たきりタン・ミソ。すると自分の隣に青い服を着た若い女性が現れ声をかけてきて驚くガンス。
青い服の若い女性は「私が見えますか?」と、なぜか嬉々として聞いてくる。廊下に出ても付きまとってくる彼女はタン・ミソと名乗った。たわ言と思っているガンスだが、廊下の壁鏡に自分しか映っていないことに気付く。しかも、タン・ミソが話す言葉はガンスにだけ聞こえている。
タン・ミソは、交通事故に遭った時に自分は空に浮いていたという。そして全盲だったのに、自分が道路に横たわっている姿を見ていた。そのれからベッドのタン・ミソの意識が眠っているとき魂は身体から離れることが出来るという。タン・ミソは自分を見ることが出来るガンスに連れて行ってほしい所があると懇願する。彼女の代理人ホジョンの結婚式だった。タン・ミソの生い立ちなどを聞かされるうちに、ガンスも病気だった妻が事故で死んだことを思い起こしていく。心の奥に在る哀しみと“なぜ”を互いに思い遣る二人には、心が寄り添うことで互いにいやされる絆が生まれていく…。
【見どころ・エピソード】
前作「無頼漢 渇いた罪」ではかなり後ろ暗いジュゴン刑事役で終始冷徹な厳しい目つきをしていたキム・ナムギルだが、本作では妻を亡くした悲しみとタン・ミソや入院している子どもへの思い遣りが伝わる優しく物憂い気な眼差しが印象的。タン・ミソの遊離魂との会話が、笑いと涙を誘いながらファンタジーからサスペンスへとストーリー展開していき飽きさせない。しかし、私には受け止めることはできても受け入れがたい結末なのだが、観た人それぞれに投げかけられているものがあるのだろう。 【遠山清一】
監督・脚本:イ・ユンギ 2017年/韓国/113分/映倫:G/原題:One Day 配給:ファインフィルムズ 2017年7月29日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開。
公式サイト http://www.finefilms.co.jp/oneday/
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