インタビュー:エマヌエーレ・クリアレーゼさん(映画監督:4月6日公開「海と大陸」)
インタビュー:エマヌエーレ・クリアレーゼさん(映画監督:4月6日公開「海と大陸」)――青年の目を通して語られる良心の光と自由への希求
4月6日(土)より岩波ホールほか全国順次公開される映画「海と大陸」。アフリカから押し寄せる難民・不法移民と地中海に浮かぶ島の切実な社会問題と良心の自由をテーマに描いている作品。エマヌエーレ・クリアレーゼ監督に、本作の制作意図などについて話を聞いた 【遠山清一】
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イタリア。あの長靴の先っぽのようなシチリア島をさらに南下し、アフリカ大陸のチュニジア、リビアに近いペラージェ諸島のリノーサ島が映画の舞台。地中海でも透明度の高い観光の島で人口550人、面積は5・45平方キロメートルの島。エマヌエーレ・クリアレーゼ監督は、「この物語を生まれた時から島を離れたことがない20歳の青年の目を通して描きたいと思った」。
主人公の青年フィリッポは、2年前に海で父を亡くした。昔からの漁師堅気の祖父エルネストと、母親ジュリエッタとの3人暮らし。ジュリエッタは島を出て新しい仕事をしたいと願っている。
ある日、漁に出たエルネストとフィリッポは、大勢がひしめき合うアフリカからの難民船に遭遇。当局に連絡したが無視するようにとの指示。だが、数人の男たちと妊婦のサラと男の子とが必死に泳ぎ着き、2人は彼らを船に引き上げて帰港した。
溺れている者を見たらまず助ける。海の男エルネストには当然の行為だが、法律は難民・不法移民問題として扱い、島の人たちは島のイメージダウンにつながりかねないと疎んじる。島は、漁業ではなく観光客の遊覧船や貸室で暮らす時代になっていた。
サラは、トリノで働く夫のところへ行くため2年前に子どもと2人でエチオピアを出てきた。ジュリエッタと同じように、サラも家族と生きるために仕事と自由を求め、命をかけて海を渡り、大陸を目指している。だが、難民を救助したことを知った新任の警察署長は、エルネストの船を没収してしまう。
撮影した09年は「イタリアでは難民が漂着するピークの年だった」。’この問題はもういいよ’という雰囲気の中で、受け入れられるかどうか懸念もあったが、「自分のキャリアとしては、興行成績を考えすぎず撮るべきものを撮っていい時期ではないかと思い」作品にした。結果は「良い反応と評価を受けて、非常に満足している」。
海の美しさを知り尽くしたカメラワークがすばらしい。海を鎮める海底のマリア像に絡み付く海藻や捨てられたゴミから目を上げれば、遊覧船から一斉に海に飛び込む観光客たち。人間の生命を守ることが優先されない法律を作り出す現代。それでも人は、明日への光と自由のある生を求めて大陸をめざす。世界の現実の問題が、詩的な映像で観る者の心を照射する作品だ。【遠山清一】
監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ 2011年/イタリア=フランス/93分/原題:Tettaferma 配給:クレストインターナショナル 2013年4月6日(土)より岩波ホールほか全国順次公開。
公式サイト:http://umitotairiku.jp/
2011年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞、2012年米国アカデミー賞外国映画賞イタリア代表作品