8月27日号紙面:学校現場で恐怖刷り込み 千鳥ヶ淵「8・15平和祈祷会」で現役教員が証言
戦後72年目の8月15日早朝、今年も東京・千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑で「8・15平和祈祷会」(同実行委員会主催)が開かれた。都内の公立小学校教員の藤田直彦氏(バプ連・恵泉バプテスト教会員)が、ルカによる福音書21章28節から「解放の時」と題し説教した。【中田 朗】
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最初に、自分が勤める小学校で起こった出来事について話した。「4月28日、給食を食べていたら突然チャイムが鳴り、校長が話し始めた。内容は、万が一弾道ミサイルが発射された場合、建物の中に入る、物陰に隠れる、窓には近づかないなど、注意を呼びかけるものだった。同時に『弾道ミサイル落下の行動について』『弾道ミサイル落下時の行動に関するQ&A』というプリントと保護者宛の文章が配布された」
現在の社会状況から、北朝鮮が実際にミサイルで日本やアメリカを攻撃すること、アメリカが北朝鮮を攻撃することはありえないと考える藤田氏は「このような放送やプリントは、必要以上に子どもたちを不安にさせはしないか。韓国系朝鮮系の子どもたちへのいじめを引き起こしはしないか」と懸念を覚えたという。しかも、「弾道ミサイル落下の行動について」というプリントは、内閣官房ホームページ「国民保護ポータルサイト」に掲載されたもので、内閣官房局から各地自体へ「周知するように」との通知があり、それが学校関係者まで降りてきたものだった。
藤田氏は、これらは「演出された危機」だとし「今回のプリントで、どれだけ多くの人たちに、『北朝鮮は危険な国』という意識が刷り込まれたか。子どもを通して配布した区などの問題は大きい」と指摘。「北朝鮮は悪い国と言う子に私はこう問う。『北朝鮮の人は全員悪い人なのか。花を植える人、子どもを遊園地に連れて行く父親、子どもを保育園に預けるお母さんもいるのではないか』と」
「ルカ21章では『神殿崩壊の予告』『終末の徴』『エルサレムの滅亡の予告』などの描写が続く。その中で『このようなことが起こり始めたら、身を起こして頭を上げなさい。あなたがたの解放の時が近いから』(28節、新共同訳)と書かれている。聖書は諸国の民が不安に陥る時、頭を上げなさいと語りかける。解放の時が近づいているのを知る私たちだからこそ、不安をり戦争のできる国づくりを進める政府のうそを見破れる。そのうそをみんなで確認し合いつつ、主に従って平和の道を歩んでいきたい」と結んだ。
説教の後、参加者は各グループに分かれ、この国が二度と戦争を起こさないようになど、心を合わせて祈り合った。