映画「エクソダス:神と王」――現代的な革命家モーセに再解釈

ヒッタイト族との戦いに赴くモーセ © 2014 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.

‘エクソダス’。旧約聖書「出エジプト記」でのモーセの誕生から奴隷となっていたイスラエルの民を約束の地カナンへ導く物語をモチーフに描いている。 「出エジプト記」のモーセをメインにした映画としては、セシル・B・デミルの「十戒」(1956年)、やロバート・ドーンヘルム監督の「キングダム・オブ・アーク」(2005年)が日本で上映されDVDなども発売されている。比較的丁寧に聖書の内容を脚色したこの2作品に比べると、本作はかなり現代的な解釈で脚色されている作品。特徴的なのは、モーセがユダヤ民族をエジプトから解放してカナンへ導いた軍略家・革命家として解釈しているところだろうか

人間関係の設定では、パロのセティ王の妹ビティアの子として育ったモーセは、セティ王の王子ラムセスと兄弟同様に宮廷で成長し、共に将軍として勇名を馳せている。この関係が、やがて神に選ばれヘブル人をエジプトから脱出させるモーセと、その時は王となってヘブル人の解放を頑強に拒否するラムセスとの確執が新たな人間ドラマとして見応えのある効果を与えている。
また、神に選ばれたモーセは、聖書のモーセのように神を畏れて、預言者的に従うという姿ではなく、王国の将軍のように強い意志と決断力を持ち、時には神に対して食って掛かり、十戒さえも民の指導者として活用することに思いを巡らすように見える解釈と演出をしている。それは、現代に求められている強くて賢い指導者像のようにも見える。

ラメセス王にユダヤ民族の解放を迫るモーセ © 2014 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.

紀元前1300年代に、中世のような騎馬での野戦が展開されたのには少し驚き隠せなかったが、壮大な映像と壮絶なアクションに定評のあるリドリー・スコット監督ならではの演出を存分に楽しめる。とりわけ、10の災いがラムセスとエジプト人に襲いかかるシーンや葦の海へ向かったヘブル人を追うエジプト軍の追跡、葦の海の水が分かれ、ラムセスとモーセが対決するシーンなどは3Dならでは迫力。

スペクタクル映画として存分に楽しめるが、聖書のストーリーをある程度知っている向きには、本篇との違いを熱く語り合いたくなるかもしれない。【遠山清一】

監督:リドリー・スコット 2014年/アメリカ/原題:Exodus: Gods and Kings 配給:20世紀フォックス映画 2015年1月30日(金)より全国ロードショー。
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/exodus/
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