絵画展「グエルチーノ展」2015――よみがえるバロック期の画家 その足跡と画風の変遷を初公開

「グエルチーノ展――よみがえるブロックの画家」(3月3日―5月31日まで、月曜日休館。会場:東京・上野の国立西洋美術館)。名声を求めた初期から宗教画と理想を追求した後期まで、主要な40点におよぶ作品群を5部構成で展示し、その創作の足跡と画風の変遷が紹介されている。

イタリア北部チェント出身の17世紀バロック期の大画家グエルチーノ(本名:ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ。1591年2月8日―1666年12月9日)。彼の創作活動の全貌を紹介する「グエルチーノ展」が、3月3日より東京・国立西洋美術館で開催された。(5月31日[日]まで。休館日は月曜)

<足跡と画風の変遷を主要作品約40点5部構成で>

同展は、?.名声を求めて、?.才能の開花、?.芸術の都ローマとの出会い、?.後期?聖と俗のはざまの女性像、?.後期?宗教画と理想の追求など5部構成で、グエルチーノの足跡と画風の変遷をたどっていく。
絵画の師匠を持たなかったグエルチーノは、独学で先人たちの画風を学んだ。最初のゾーンには、ルドヴィコ・カラッチがチェントの教会の祭壇画として描いた《聖母子と聖人たち》(1591年。写真右上)が飾られ、その模索の時代を象徴的に印象付けている。同じく初期グエルチーノの傑作「聖母子と雀」(1615―16年ごろ)もまた、ルドヴィコ・カラッチの作風が強く影響しているとしている。
ボローニャの大司教アレッサンドロ・ルドヴィージに制作依頼を受けてから、グエリチーノの才能は目覚ましく開花したといわれる。このゾーンには《聖三位一体》(1616―17年ごろ)、《キリストから鍵を受け取る聖ペテロ》(1618年)など13点が展示され、強い明暗法など画風が確立していく歩みが伝わってくる。
第3のゾーンは、大司教アレッサンドロ・ルドヴィージが教皇グレゴリウス15世となり、ローマに呼ばれた1621年から23年までのローマ滞在によって、画風が変容していく様を追っている。このゾーンでの展示は5点と少ないが、《聖母被昇天》(1622年)、《放蕩息子の帰還》(1627―28年ごろ)、《聖母のもとに現れる復活したキリスト》(1628―30年ごろ。写真下)など、いずれも傑出した作品が出展されている。
古典主義的な作風が落ち着いていく後期のゾーンは、グエルチーノがもっとも意識したといわれる同時代のボローニャの画家グイド・レーニとの女性像の作品を比較的に展示することで、グエルチーノの個性を見いだす試みがなされているパート?(?のゾーン)。パート?(?ゾーン)には、《洗礼者聖ヨハネ》(1644年)、《説教する洗礼者聖ヨハネ》(1650年)、《ゴリアテの首を持つダヴィデ》(1650年ごろ)ほかキリストとサマリアの女、マグダラのマリアの悔悛など、よく知られている聖書の宗教画がイタリア・バロック美術の大画家の理想郷を指し示している。

ローマ滞在はグエルチーノの画風を大きく変えたといわれる。 《聖母のもとに現れる復活のキリスト》 1628-30年頃は、同展の公式図録の表紙にも採用されている。

同展を企画・運営している国立西洋美術館は、今回展示されているグエルチーノの《ゴリアテの首を持つダヴィデ》を所蔵している。そのグエルチーノが誕生し、創作活動の中心地であったチェント市は、2012年5月に起きた大地震で被災しチェント市絵画館は現在も閉館されたままの状態で復旧のめどはたっていない。同市の復興事業のための一環として、グエルチーノの創作活動の全体像を紹介する国内初の展覧会が実現した。
キリストの受難週からペンテコステを挟んでの開催期間、バロック期の大画家の作品を望みつつ聖書に親しむひとときがここにある。 【遠山清一】

「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/guercino2015/

同展ホームページには、会期中の関連イベントの案内が掲載されています。
関連イベント:http://www.tbs.co.jp/guercino2015/event/