2018年07月01日号 02面

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  「環境問題は教会が真っ先に取り組むべき福音的課題か?」|との問いかけをもって、第1回聖書的環境シンポジウムが6月11日、都内で開かれた。主催した「福音に生きる持続可能な社会」をめざすコンソーシアム(連合共同体)=住田裕代表=は、2009年の第5回日本伝道会議(JCE5)環境プロジェクトに端を発し、16年JCE6のプロジェクト「持続可能な社会の構築」を機に発足。日本伝道会議では23年に予定している次期JCE7に向けて各プロジェクトに継続活動が求められているが、その一環としても聖書信仰の立場から環境問題を考える取り組みの深まりとネットワークの広がりが期待される。

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 主題講演は聖書学の立場から「神の国と環境」|空間と時間|と題して、東京基督教大学非常勤講師・共立基督教研究所研究員の山口希生氏(同盟基督・中野教会伝道師)が、「環境問題」は福音的な問題かを問いかけた。

 現実には、多くのクリスチャンは環境問題を福音の問題とは捉えていない。山口氏はその理由を終末理解にあると見る。この世界は滅びに向かっているとするなら、クリスチャンの喫緊の課題は環境問題よりも滅び行く世界から一人でも多くの人を救い出す「救霊」にある、と考える。この発想によれば、救済論もキリストが死なれたのは選ばれたクリスチャンたちの救いのためであり地球全体を救うためではないから、環境問題は福音の核心的問題とはならない。

 しかし山口氏は、聖書が語っているのはむしろ、神が造られたこの被造世界そのものが神の贖いの対象だということではないかと捉える。そして、この両方の見方を支持するように見える代表的な聖句を取り上げて検討した。

 イザヤ65章や黙示録21章に描かれている「新天新地」について、それは現在の世界とは異なるまったく別の世界へのreplaceなのか、あるいは現在の世界そのものを滅びから救い出し回復・刷新するrenewalなのかを検討。私たちはキリスト教の「救い」を空間的な問題|この苦しみに満ちた世界を離れてすばらしい「天国」に行くこと|と捉える傾向がある。しかし聖書が教える「救い」は空間的というより「時間的」なもの|神が創造した私たちの世界が神の望まれる姿に回復していく新しい時代が到来すること|ではないか、と問題提起した。

 聖書の教えは「この世」から「あの世」への移行ではなく、「今の悪い時代」が「神の愛の支配が実現する良い時代」に移行することだとして、ガラテヤ1・4を新改訳の第三版と2017で比較。前者が「キリストは、今の悪い世界から私たちを救い出そうとして」と訳していたのを2017では「…今の悪い時代から…」と変更したことを指摘。原語の釈義から、この個所は「キリストが信仰者を悪の世界から救い出して別の世界に連れて行ってくれる」のではなく、「キリストがこの悪の時代を終わらせて、新しい時代を到来させる」ことを語っていることを論証した。

 このほかローマ8・19〜23、黙示録11・18、コロサイ1・14〜19、Ⅱペテロ3・4〜12を検討。「人間の罪により神の創造の目的とはかけ離れた状態に堕してしまった被造世界全体が神の救済の対象」と結論づけた。また、神の裁きの目的は、地球を滅ぼすことではなく、地球そのものは神の守りの中にあり、リニューアルされることにある、とした。

 結論として、「世界の完成途上にいる私たちは、すでに主にあって贖われた者として、神の被造世界の回復の働き、神の国の完成に向けての働きに参与するように招かれているのです」として、地球環境保全が福音的課題であることを示した。

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 午後には、うえだ有機楽農会会員の松井務氏が「里山から持続可能な世界を目指す」と題して有機農法による米作りについて、Farm Becai代表の大村真理氏が「自然環境保護と有機野菜栽培」について、それぞれキリスト者としての実践の現場から報告した。代表の住田裕氏(日本長老・幡ヶ谷キリスト教会牧師)は、環境コンソーシアムの目指すものについて、同志のネットワークを広げつつシンポジウムを継続し、問題意識を深めながらJCE7につなげていきたいと抱負を語った。【根田祥一】