2018年10月07日号 02面

 性差別や性暴力の問題は社会一般だけではなく、教会にも問われる問題となっている。日本キリスト教協議会(NCC)教育部が協力し、2012年から始まった「性と人権 キリスト教全国連絡会議」は教会特有の課題を議論している。第3回会議は「教会の異性愛主義・家族主義を問う」をテーマに9月16〜17日、神奈川県三浦市のマホロバ・マインズ三浦で開催した(参加者63人、賛同人34人、賛同団体8)。

同実行員会がレポートする。

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 今回は「性と人権」の視点から、キリスト教・教会の父権制に基づく性差別的制度や権力構造を問う、教派を超えたネットワークを創る必要性が再確認された。

 会議1日目は、基調報告として実行委員がテーマについて語ることから始めた。河内理恵さん(日本バプテスト連盟目白ヶ丘教会員)は、「教会の父権的な家族主義は性別によらず様々なハラスメントを引き起こしている」と指摘。自らを問い直しつつ「女性の視点、マイノリティーの視点で聖書を読み、福音によって励まされ、人から認められる人生ではなく、自分で自分の人生を生きていく自由と責任がある」と述べた。

 八木かおりさん(日基教団・三里塚教会協力牧師)は、かつての教会女性会議、日本基督教団性差別問題特別委員会での経験、また「三里塚教会問題」に関わる中で、教会の権力構造の暴力性を考えてきた個人史を語り、「いのちを否定する力への抵抗を、女たちから受け渡されてきた。『個』のネットワークをつなぎたい」と述べた。

 渡邊さゆりさん(日本バプテスト神学校)は、「批判的フェミニスト神学の聖書解釈が、父権制的システム内で循環していた『批判的聖書解釈』を再批判しなければならない」と考える。「『弱さの自覚』を押しつけられることこそが、異性愛主義、家族主義が得意とするシステムの鍵。そのシステムに巻き取られないために、いろいろな方向からのつかみあい、立ち続けられること、一緒に休めることが必要」と語った。

 堀江有里さん(信仰とセクシュアリティを考えるキリスト者の会=ECQA)は「教会は『神の家族』を模してきた以上、存立構造に家族主義を含むのではないか。そのため、教会での家族主義批判は困難あるいは不可能だが、クィア神学の視点から性規範を問うと同時に、戦時下に家族主義の国策のただなかにあった教会の戦争責任を問う必要もあるのでなないか」と話した。

聖書研究吉谷かおるB

写真=聖書研究で語る吉谷さん

 2日目の午前は聖書研究を吉谷かおるさん(日本聖公会管区・女性デスク)が担当。「母とはだれか、きょうだいとはだれか」と題して、マタイ12章46〜50節から学んだ。ご自身の経験や、「異性婚」を問い直す作業から見出してきたこととして、イエスが群衆、弟子たちを「母、きょうだい」と指したのは、血縁関係の絶対化を否定し、また、父権制的な家族モデルを共同体の人間関係に強制する事態も否定することだと指摘、そこから異性愛主義に基づく家族主義を越えていく可能性が語られた。

 午後の分科会では「教会のセクシュアル・ハラスメントの現状と課題 」(城倉由布子=日本バプテスト連盟セクシュアル・ハラスメント防止・相談委員会)、「教育と『家族主義』」 (比企敦子=実行委員、NCC教育部)、「同性愛者差別と異性愛主義−日本基督教団『伊藤発言・大住文書』から20年−」 (堀江有里=上記実行委員)が開かれた。

 全体協議では、会議の課題についての意見交換の後、次回開催に向けて実行委員会を組む方向で検討することを確認し閉会した。