10月7日号紙面:南米・映画「ミッション」の舞台で初演奏 フルート奏者・紫園香さん 宣教の原点と現在に出合う
2018年10月07日号 02面
日本を代表するフルーティストの紫園香さんは9月1日、マッケンジー大学で行われた盛大なブラジル日本移民110周年記念コンサートを終えた後、多忙なスケジュールをぬって、9月4日から6日の3日間、イグアスへ移動し、さらにアルゼンチン入りしてミッショネス州を初訪問した。
ここは映画「ミッション」の舞台となった地、紫園香さんは世界中行く先々のコンサート、演奏会などでこの映画で使われた「ガブリエルのオーボエ」を演奏しており、今では彼女にとっては宣教のテーマ曲となっているが、今回初めて、実際そのドラマが17世紀に展開したと言われているイグアスの滝およびイエズス会遺跡においてビデオ収録をした。
なおこのビデオ収録は、在原繁・津紀子宣教師夫妻(アンテオケ宣教会派遣)、カメラマンの宮島拓人(ひろと)氏らの協力があって実現した。在原宣教師夫妻はミッショネス州を拠点に30年間アルゼンチン宣教に携わっている。この夫妻にとっても映画「ミッション」の史実的な出来事は、宣教の原点であるという。
紫園さんの活動の特徴は神様の風を運ぶこと、その原点は一人ひとりに寄り添うことにある。今回も、1980年代の映画「ガイジン」でヒロインをつとめた元女優の塚本恭子さん、クリスチャンペンライト賞入選者の宮島右近氏、そして現地の日系団体が運営する高齢者施設「サントス厚生ホーム」を訪問した。どこでも、どんな悪条件でも演奏し、つねに機会を逃さず伝道する紫園さんの姿がそこにあった。
訪伯に際して、2か所で開講したマスタークラスでは、多くのフルート学習者が詰めかけ、紫園さんの指導に熱心に耳を傾けていた。レベルの高い音楽指導者、演奏家たちが定職につけず、外国に流出してしまうブラジルでは、海外から教えに来てくれることを待ち望んでいる学習者たちが少なくない。そのような観点から紫園さんの今回のミッションツアーは、コンサート活動にとどまらず音楽教育の面でも貢献された。現地の音楽学習者らと接したのち、「ブラジルにもこんなに多くの音楽家のたまごがいる」と感想を述べられた。特に日系キリスト教連盟の歓送会の席では、ブラジルで音楽伝道者を養成するプロのミュージックミッショナリー学校の設立を提言された。これは現地のキリスト教会にとっては、大きなチャレンジを与えられたことになる。
紫園さんは8月23日から3週間の日程で、サンパウロを中心にミッションツアーを行った。その間、チャペルコンサート、礼拝奉仕、マスタークラス、伝道コンサート、慰問コンサート、訪問コンサートなど全13か所で演奏活動をされ、9月10日に日本へ帰国された。
(レポート宮島熱示=ブラジル長老ペーニャ教会)