2018年12月09日号 01面

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写真=各教団教派や宣教団体の青年伝道担当者、社会人、学生、中高生らが集った。円内左から品川さん、西村さん、蔦田さん、大嶋さん、スズキさん。22日東京千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで。

「組織が動かない」「超教派が混乱をもたらした」…。青少年伝道に立ちはだかっていた、このような壁を超えていく動きが進んでいる。日本福音同盟青年委員会は2004年設立以来、教会と青少年宣教団体の信頼関係構築をテーマにしてきた。17、18年には教団教派の青少年担当者向け、青少年宣教団体向けにそれぞれサミットを開催。第2回日本青年伝道会議(NSDⅡ、日本福音同盟[JEA]青年委員会主催)初日の11月22日には、教団教派、青少年宣教団体が共に集い、青年宣教サミットが開かれた。(NSDⅡ全体の詳細は12月23、30日合併号で【高橋良知】

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 「教会は教会、宣教団体は宣教団体ではなく、神の国、神様の愛の支配が日本におよぶという共通の目標のために、一致していこう。そのためには神の国の視点が重要」。NSDⅡの開会礼拝で、JEA総主事の品川謙一総主事は語った。

 神の国について「国境に囲われた『国土』のイメージではなく、王を真ん中にして周囲に統治が広がるイメージ」と説明。「教会、コミュニティーの囲いを超えて神の愛の支配が広がります」

 NSDⅡのテーマ聖句のマルコ1章14〜15節を引用。「神、罪、救いを基本にした魂の変革を中心として、世界、社会、地域に、すでに神の支配、計画があることを知りたい」と、東日本大震災などの被災地支援、在外日本人伝道、在留外国人教会との協力、世界福音同盟(WEA)、国際ローザンヌ運動、トランスフォームワールドの連携など国内外の宣教協力の動きを紹介。宣教を担う中心が欧米だけではなく、アフリカ、南米、アジアなどにもあるという「ポリセントリック(多中心的)」の視点も示した。

 「世界の人口を見ると52%が30歳以下。今後、今までの手法は塗り替えられる。NSDⅡは、少子高齢化だからやるのではない。神様がこの時代の若い世代一人ひとりに、語りかけていることがある。それを分かち合い、この時代に神様が願うミニストリーが生まれていくことを願っている。自分の魂の奥底を変えた神の愛をどうやって広げて行くか。そういう冒険の旅に招かれている」と勧めた。

変えられやすく」なり、
「変えていけないもの」も確認

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青年宣教サミット前半では、教団教派で青少年伝道を進めてきた働きが紹介された。西村敬憲さん(同盟基督・西大寺キリスト教会牧師)は「教会、牧師、役員を批判するだけでは解決しない。その背後にある組織を変えていかないといけない」と語った。

 同教団の世界宣教大会の準備や本大会での発表の機会に 青少年伝道の重要性を訴え続け、教会を離れる中高生のケア、そのための人材育成などの方策を進めた。

 このような取り組みを通して、同教団で2本柱としていた国内宣教、国外宣教に加えて青少年宣教が認知され、同教団理事会でも3本柱として承認されるようになった。

 「教団のシステムを青年宣教に利用すべき」と述べ、世代の溝や予算の課題、教団のリーダーとの信頼関係構築、青少年に理解ある理事の選出など、組織を動かす実際的な過程も語った。

 「青少年伝道は天才的カリスマが引っ張るだけでなく、組織で動くことが大事。教会においても、役員会に働きかける方法を考えてみて」と勧めた。

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 蔦田聰毅さん(インマヌエル堺キリスト教会牧師)は「私たちの中に、パリサイ化の傾向がないか」と注意を促した。「青年は、旧世代からすると新しい感覚、雰囲気を持ち、なじまない。だから旧世代は危険視しがちになります」

 制限の多かった教会での中高生時代、離れた同世代についての葛藤を振り返り、「牧師も真面目に先輩に言われたことに忠実にやっていたと思う。ただ時代の変化に対して、教会の動きが遅かった」と述べた。

 青年全国キャンプなど、青年の働きを立ち上げるたびに実現まで理解が進まなかった。しかしやがて、全国集会の気運が高まり、「とにかく全国集会をしよう」と2007年に全国中高キャンプ(とにキャン)、08年に全国青年キャンプが実施された。「神の国マインドで地上の評価をおそれずやりたい。青年が育つと、反対していた人も変わる。忍耐は続くが希望をもってチャレンジしたい」と語った。

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 後半は青少年宣教団体から発題。キリスト者学生会総主事の大嶋重徳さんは、教会批判や分裂を引き起こすなど、「超教派が教会に痛み、 悲しみ、怒りを引き起こした」という事実を認め振り返った。「しかし広がり、恵みがあるのも事実。世界大の動きの中で、アンテナを立てることができる。動画やイベントでの照明の使い方、説教のリズムなど、どういう届け方が若い世代に届くのか知っていることは重要。神学や教団教派の成立の違いを超えて、変えられやすくなりつつ、変えてはいけないものが何かも確認できるのは超教派での出会いです」

 「『あなたはいつ献身するの』と言われるなど超教派団体スタッフとしての孤独もある。若者伝道のスペシャリストとして、混乱ではなく、教会を建て上げるものとなりたい。パラチャーチのパラはパラクレイトス、聖霊なる神を表す。教会の傍らで励まし、一緒に日本宣教、若者宣教にお仕えしたい」と語った。

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 hi-b.a.(高校生聖書伝道協会)スタッフのスズキ知恵子さんは、「高校生世代は、子どもから大人に成長し、アイデンティティーを考える大切な時期」と話した。「超教派の場で、親、教会の牧師とも違う、よい信仰のモデルに出会うと成長する。hi-b.a.スタッフ以上にクリスチャンの高校生どうしの影響力が大きい」

 「地域の教会にいくと、様々な葛藤がある。ある教会はトラブルが起きて、ユースに対するアレルギー反応がある」という実態にも触れた。「地域の違いもある。学校の始まりや終わり時間、部活の重要性、放課後の過ごし方、どこが居場所か。これらをいちばん実感し、きめ細かに対応できるのは地域の諸教会。教会間の協力の難しさはあるが、宣教団体がつなぐことができる可能性もある。教会、教団教派、宣教団体と協力していかないと日本の青年の伝道は進んでいかないと実感します」。サミットには、教職ほか、社会人、大学生、中高生なども参加して活発に発言をしていた。