2018年12月09日号 02面

 働き手と教会をつなぐ新たな働き「無牧ミニストリーズ」がこのほどスタートした。立ち上げたのは、茨城県筑西市にある単立・幸町キリスト教会の栗﨑路(くりさき・あゆみ)牧師。無牧教会と働き手のデータベースを構築し、情報を集めることでマッチングを実現しようという試みである。

 日本国内にある七千900のプロテスタント教会のうち、300教会には牧師が不在。兼牧など、専任の牧師がいないケースも含めると、その数は千教会にもなる。教団などから牧師が派遣されてくる場合は、無牧の状態は一定期間で解消されることが多いが、各個教会主義で教会が牧師を招聘する形をとる場合は、なかなかそうはいかない。また、約1割を占める単立教会の場合は、もともと自分たちでどうにかするしかない。
無牧になる要因としては、後継者不足・教会員の高齢化・地域格差・情報不足などが挙げられる。こうした要因が重なって無牧になってしまった教会は、活力が低下し、教会員の数も減っていくことも少なくない。かと言って、新たに牧師を招聘しようにも、適当な人材をどうやって探してよいかが分からず、「ただ祈るしかない」状況に追い込まれる。一方で、働きの場を求めている働き手も一定数いるが、どこに必要があるかがなかなか分からない。このような状態を打破すべくスタートしたのが「無牧ミニストリーズ」だ。OLYMPUS DIGITAL CAMERA
栗﨑牧師が無牧の問題に取り組むようになったきっかけは、信仰を持って間もない大学生時代、クリスチャンの友人から「牧師がいなくて、教会が減っていく」と聞いたことだった。「働き手が与えられますように」と祈り続けるなか、その祈りはやがて「私を遣わしてください」という祈りに変えられていく。こうして献身に導かれ、4年間働いた消防士を辞めて、関西聖書学院で学び、さらにアメリカのシアトルバイブルカレッジに留学。そこで出会った一人のクリスチャン女性から、「母教会が無牧になっている」と聞いたことが次の転機だった。帰国後、その無牧になった幸町キリスト教会に牧師として赴任する。
きっかけを作った女性も、当時はアメリカでソーシャルワーカーとしての研修中だったが、東日本大震災で傷ついた故郷の役に立ちたいと、栗﨑氏より一足早く帰国。2人は交際に導かれ、結婚。現在の牧師夫人、利百加(りべか)さんである。
「意欲だけで赴任した」という栗﨑牧師だが、無牧になっていた教会ならではの難しさにも直面。それらの課題を一つひとつ乗り越える中で、「この経験を活かすことはできないか?」との思いが湧いてきた。その思いを形にしたいという願いに応えるかのように、東京基督教大学で研究する道が開かれ、無牧教会のサポートシステムに関する論文を執筆して修士号も取得。それを踏まえて実際に活動を始めたのが「無牧ミニストリーズ」だ。
手始めに教会のウェブサイトで呼びかけると、約半年間で20人ほどの働き手からアプローチがあったという。また、同じように無牧の問題への取り組みの必要性を感じていたお茶の水クリスチャン・センター(OCC)の首都圏宣教ネットワークから協力の申し出があり、来年からはOCCに拠点を移して、「OCC無牧ミニストリーズ」として活動することも決まった。
「これからは全国の神学校とも連携し、情報の共有を図り、働きを進めていきたい。さらに、信徒牧会者の育成やシニアのための学びのコースの開設なども呼びかけていきたい」と栗﨑牧師は語る。問い合わせは「無牧ミニストリーズ」(Tel080・4195・4316、URL http://saiwaicc.org/support/)まで。(レポート・山口暁生=いのちのことば社出版部編集者)