2019年02月03日号 01面

 【ANS】「オープン・ドアーズ ワールド・ウォッチ・リスト2019」(※)によると、アジアはクリスチャンに対する迫害の新たな温床となっている。www.keepthefaith.co.uk は、アジアでの迫害は過去5年間で急激に増加し、現在アジア人クリスチャンの3人に1人は深刻な迫害に苦しんでいると報告している。中国は「ワールド・ウォッチ・リスト」の迫害の深刻な国のランキングで、順位を16上げて43位から27位になった。中国の新しい法律はすべての宗教表現を統制しようとしている。

 Open Doors UK and IrelandのCEOであるヘンリエッタ・ブリスは、こう述べた。「我々の調査は、世界でクリスチャンに対する迫害が、驚くほどに増加していることを明らかにしている。中国では、過去10年以上も無かったほどに、迫害が最悪になっていることを数字は示している。驚くことに、1976年に最後を迎えた文化大革命以来最悪だ、と言う教会指導者たちもいる。我々のデータは、世界中で深刻な迫害を経験しているクリスチャンの数が、昨年に比べて13・9%も増加していることを明らかにしている。実数にして、3千万人増加したということだ」。

 世界最大の民主主義国であるインドは、「ワールド・ウォッチ・リスト」のランキングで初めて10位に入った。これは、キリスト教徒や教会の台頭に対して、ヒンズー教徒の過激派が、刑事罰に問われることなく、暴力的な攻撃を行ったためである。これは、インドの重要な非ヒンズー教の宗教的少数派に対する暴力の波をもたらした、超ナショナリズムの高まりによって引き起こされた。このナショナリズムの高まりは、ブータン、ミャンマー、ネパールなど、国家と宗教とが強く結びついている他の国々でも同様の迫害につながっている。

 インド人またはネパール人であることはもっぱらヒンズー教徒だ、ということであり、ビルマ人またはブータン人であることは仏教徒であることを意味するので、それ以外の少数派の信仰者は、突如として排除されることになる。僻地の農村に暮らすクリスチャンには、ことに大きな影響を与える。

 ヘンリエッタ・ブリスは次のように語る。「世界に“非暴力”という道があることを教えてくれたインドが、現在、私たちの『ワールド・ウォッチ・リスト』にイランのような国と並んで入っているのは痛ましいことだ。インドの多くのクリスチャンにとって、彼らの日常生活は恐怖に満ちている。ほんの4、5年前とはまったく変わってしまった」

 東南アジアでは、イスラム過激主義が憂慮すべき高まりを見せている。インドネシアでは、1日に三つの教会が自爆テロの攻撃を受けた。フィリピンのミンダナオやインドネシアのアチェのような場所にあるISに属するグループの地域がそのエリアを広げ、支配する地域を拡大している。

世界中で迫害が起こっている

 北朝鮮での迫害は、世界の他のどの国よりも悪く、その状況は過去18年間続いている。5年前には、クリスチャンがその国で受けている迫害のレベルが北朝鮮ほどに突出している国は他には無かった。しかし、今年の「ワールド・ウォッチ・リスト」のランキング上位11か国に住むクリスチャンは、北朝鮮と同様に突出したレベルの迫害の中で暮らしている(迫害指数100ポイント中81以上)。その順位は、北朝鮮(1)、アフガニスタン(2)、ソマリア(3)、リビア(4)、パキスタン(5)、スーダン(6、エリトリア(7)、イエメン(8)、イラン(9)、インド(10)、シリア(11)。オープンドアーズの迫害専門家たちは150か国の状況を監視しているが、今年は状況が非常に悪くなったため、リストの上位50位の国のポイント総数は、2014年に比べて21%も増加している。18年の1年間で、4千305人以上のクリスチャンが、ただ信仰のゆえに殺害された。多くの死は報告されることなく処理される。なぜなら、死者の友人や親戚がそれを殺害として報告することを恐れているためである。これは特に農村部でキリスト教に改宗した者に顕著である。

 ナイジェリアの北中部地帯では、少なくとも3千700人のクリスチャンがその信仰のために殺害され—それは、推定2千人とされる1年前のほぼ2倍—、その村々は、逃げることを余儀なくされたクリスチャンたちによって完全に放棄され、彼らを襲った武装した襲撃者たちが、なんら罪を問われること無く、その村に移り住んだ。プラトー州では、最多の千885人のクリスチャンがムスリムのフラニ族の牧者の手によって殺害され、ナイジェリアの衆議院はこれを「大量虐殺」と宣言した。この襲撃では、AK—47や、より破壊力の高い武器の使用が見られ、クリスチャンの家族を自宅で全員殺害するようなことが行われた。オープンドアーズの調査によると、ナイジェリアでのこれらの襲撃による殺害は、信仰ゆえに殺害される全世界のクリスチャンの約90%を占めている。

 アフリカでも極端な迫害が、過激なイスラム軍の手によってもたらされている。エジプトでは、シナイのISが17年にコプト教会を「一掃する」と誓った。同様のことは、リビアやソマリアや、その他のサハラ砂漠以南の国でも起こっている。

(※)オープン・ドアーズは迫害下にあるキリスト者への支援を行っている団体で、毎年最も深刻な迫害に直面しているキリスト者のいる50の国の年間ランキング「ワールド・ウォッチ・リスト」を公表している。