3月3日号紙面:すべての家庭に福音を 全国家庭文書伝道協会(EHC)特集
2019年03月03日号04面
キリストの愛をトラクトに込めて
「すべての家庭に、福音文書(トラクト)を通してイエス・キリストを証しする」。この使命をいただいて、「全国家庭文書伝道協会(EHC)」は60年以上にわたり、日本全国においてトラクト配布を進めてきました。その総配布数は推計で2億枚に達します。いのちのことば社の一部門として位置づけられています。世界のEHC本部はアメリカにあり、世界189の国と地域でその実情に応じて働きが行われています。しかし、その世界的なミッションの最初の活動は、戦後のこの日本の地で始まったのです。その歴史と現在の働きを紹介します。
写真=1990年代のEHC機関紙「たねまき」よりトラクト配布の様子
ひと組の宣教師の祈りから
時は1953年5月。東京千代田区にある「東京會舘」において日本伝道のための会議が開かれました。その会議には、約500人の牧師、宣教師が集まりました。その会議で一つの重要な話し合いが行われますが、その発端は会議の一か月前にさかのぼります。アメリカ人青年ジャック・マカリスターが日本にやって来て、「日本のすべての家庭に福音文書を配布するという計画をもつことはできないか。Every Home Crusade と名づけたらどうだろう。カナダとアメリカのクリスチャンたちがこのチャレンジを受けとめ、日本の全2千200万世帯(当時)の1軒1軒に届ける。その膨大な福音文書のための資金は必ず与えられる」とのビジョンを、宣教師のサム・アーチャーといのちのことば社を創業したケネス・マクビーティと話し合ったのです。
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トラクトのメッセージの内容も、印刷も、紙の手配も問題ありませんでした。しかし問題は、そのトラクトをどうやって各家庭に届けるのか、ということでした。そのためには、地図や詳細な統計的情報を集めて組織的に実行する必要があります。さらに2千200万の家庭は、町中だけではなく、平地や川の流域日本全国いたるところに散らばっており、険しい山道を登った先や、交通が不便な海岸地域にも広がっているのです。一人が1日200軒の訪問を5日間続けたとしても、2万2千人のボランティアが必要になります。当時、福音派のクリスチャン人口は、子どもからお年寄りまで含めて、2万5千人と言われていました。人間的に考えれば無謀な計画でした。「しかしそれでも、『行きなさい』とささやく声があった」(『小さな種から−いのちのことば社50年の物語』)のです。
教派を超えたトラクト配布
こうして沢村五郎牧師の説教を内容とする最初の大型トラクト「我に来れ」が、まず200万部印刷されました。特定の市町村にそれぞれの戸数にしたがってその数が割り当てられ、この時の伝道会議で感動した人たちが配布を約束した地域に届けられて、10月からこの壮大な計画が日本中で始まったのです。神が働かれ、牧師も宣教師も自分たちの教派に関係なく結集し、5年以上にわたって、福音がすべての家庭に伝えられていきました。その後もトラクトの全戸配布は、69年、80年、86年と4回行われ、その配布数は1億7千942万1千35部と記録が残っています(前掲書)。もちろん、実際に配布を担ってくださったのは地域の教会です。「クリスチャン新聞」88年1月3日号に掲載されたEHCのインタビュー記事「福音の空白地帯があってはならない」は「あくまでもこの計画は、教会の宣教のビジョンに対しEHCが協力するもので、教会にたよらなければ、全く不可能な計画なのです」
と記しています。
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このように行われてきたトラクト配布ですが、時代の移り変わりとともに、いくつかの変化を経てきました。人口の増大にともない、全国の家庭数は、当初の2千200万から86年には4千200万と、ほぼ倍増しました。また、この時に起きたもう一つの大きな変化は、それまでトラクトの印刷代や活動費のほぼすべてが海外からの献金によってまかなわれていたものを、すべて日本人の献金によって行うようになったことです。この経済的な自立は、もちろん戦後の日本の経済成長を背景としていました。日本で始まったEHCは、その時既にアメリカに本部が置かれその働きは世界各地に広がっていましたが、これ以降、日本は海外のEHCを支援するようになっていったのです。
それでは現在の働きを具体的に紹介しましょう。
トラクトの制作
トラクトとは、福音のメッセージを、短く分かりやすい言葉で伝える文書です。リーフレットタイプ、小冊子タイプなどがあります。トラクトは“トラクターTRACTOR”(drawing out—引っぱっていく)と同じ意味を持っています。トラクターは刈り入れた収穫を集めるものですが、 トラクトはたましいをキリストのもとに導くものです。一見地味に思えるトラクトは、すぐに結果は出ませんが、トラクター同様、 速くは走れなくてもどっしりとした頼りになる存在と言えます。
内容は、大河ドラマで放映された「西郷隆盛」や「新島八重」などの話題性のあるものから、十字架と復活をダイレクトに伝えるもの、福音を知って神さまの愛を知りクリスチャンになった方の証しなど、分かりやすく、かつ、手に取って読んでいただけるように、さまざまな題材で制作しています。
日本EHCは、アメリカ本部からの支援を受けずに経済的に自立しています。このことは、その働きが教会によって、一人ひとりのクリスチャンの方々によって支えられているということです。
トラクトは、標準的なサイズを1部定価20円で頒布しています。そのうち、印刷原価が7円、流通コスト(マージン分)が6円、活動費が7円、事務局費が7円、合計で27円ほどになります。この1枚あたりの不足分7円が、皆さんの献金によって補われています。
国際協力/海外支援
写真=ベトナムEHCのメンバ
写真=モンゴルEHCに寄贈した4WD車が活用されている
写真=無償で教育を提供するモンゴルEHCのジョイハウス
EHCはアメリカに国際本部を置き、世界189の国と地域でその働きとビジョンは広がっています。世界中に広がるEHCは、各地域毎に研修と交流をするために数年毎にカンファレンスを行っています。日本は、アジア太平洋地域に所属し交わりに加えていただき、カンファレンスの中で共に祈り合う時を持っています。(EHC本部Shttps://www.ehc.org/)
そこでの交わりを通して知り合った仲間たち、中でも特に親しいアジアにあるEHCの仲間のために援助しています。これまで、ベトナムやフィジー、モンゴルの支援をしてきました。
◆ベトナムEHCから、「オートバイの盗難に遭い、3台の新たなオートバイが必要」との祈りの課題が寄せられました。それに応えて、日本の皆さんに呼びかけて献金を送り、オートバイの購入をすることができました。
◆モンゴルEHCが奥地の遊牧民伝道のために 4WDの自動車(2千ドル)が必要との祈りの課題に応えて、日本で献金を呼びかけて車を購入することができました。現在この車でモンゴルの草原に出かけて行き、遊牧民への伝道活動を行っています。
また、モンゴルEHC総主事のバーサンドゥオーリ氏が2018年1月に来日。その際に、モンゴルのウランバートル近郊の貧しい家庭の子どもに無償で教育を提供する支援学校「ジョイハウス」に宿舎を建てたいとのビジョンが紹介されました。「子どもたちの家庭は貧しく、ゴミ集積場にお金になるゴミを探しに集まり、ゴミ集積場にトラックが来るとゴミの奪い合いになることもある。学校から1時間以上離れたゴミ集積場付近に住んでいる子どもたちの通学途中にも危険がいっぱい。この子どもたちを守るためにどうしても宿舎の必要がある」との紹介でした。
そのアピールを受けて、協力教会、日本EHCの祈りのメンバーから必要額(232万円)の献金が集まり、送金。モンゴルEHC の隣地の土地・建物、自動車を購入。既存の建物の改修をし、備品をそろえ、新学期の9月4日に開所式が行われました。日本EHCからも出席し共に祝いました。開所式後、初めて宿舎に入った子どもたちはベッドに飛び乗り、大喜び。
今回、正式に日本EHCとして今後1年間(19年8月まで)、この働きの継続のための必要額、毎月19万円(年額228万円) をサポートすることを約束してきました。現在、昼間は60人、夕方からは150人以上の子どもたちが学校に通い、教師はボランティアです。この「ジョイハウス」の働きの継続のために、子どもたちの未来のために、献金とお祈りを現在も継続して日本の皆さんにお願いしています。
今日本EHCが実施している トラクト配布キャンペーン Gospel for Japan
教会との協力の中で、その地域の全戸にトラクトを配布する宣教活動である「ゴスペルフォージャパン」の働きは、2015年3月に始まり、昨年までに49地域、15万8千427戸に配布されました。これは2011年3月に起きた東日本大震災をきっかけとしています。そのとき世界のEHCの仲間から献金をいただき、日本EHCは「ラブ・ジャパン計画」を立ち上げ、被災地の方々にお配りする「無料トラクト」を発行しました。この経験を通して、地域の教会との協力の中で、日本EHCとして「トラクト配布」の取り組みをする「ゴスペルフォージャパン」の働きが始まっています。
現在、トラクトは日本EHCから無償で提供し、地域教会との協力の中で、トラクトを戸別配布する働きを全国各地で行っています。
●聖書通信講座
聖書について知りたい方、また、キリスト教に初めて触れる方にも、分かりやすいテキスト『初めて聖書を学ぶ人のための12のステップ』を用いて、聖書通信講座を行っています。担当者が添削し、質問、疑問にお答えしますので、より深く実り多い学びになります。また、通信講座ですので、学ぶ時間は自由です。
聖書って何? まことの神は? 救いって? 聖書を学んでみたくても、直接教会には行きづらかった方が、このテキストを学んでみて、「これなら…」と教会の門をくぐられた例も少なくありません。
『初めて聖書を開く人のための12のステップ』羽鳥純二著 受講料2千700円(テキスト代を含む)
●ニュースレター「たねまき」
EHCの働きを紹介するニュースレター「たねまき」を毎月発行しています。日本のレポートだけでなく、世界各地のEHCの働きを紹介しています。
巻頭言には、トラクトに関するメッセージを掲載。一枚のトラクト伝道の働きは小さく、すぐに結果がでなくても、確実に実りがある働きであることが紹介され励ましを受けます。
世界各地のEHCの働き、特に困難な地域での伝道活動などを「祈りの世界地図」で紹介しています。また、世界各地のEHCから届く祈りのリクエストを、毎日祈るプレーヤーカレンダーとして掲載しています。また、初めて耳にするその国がどこにあるかが分かるように世界地図でその場所を示しています。
日本EHCが行っている海外支援、また、国内でのトラクト配布の働き(ゴスペルフォージャパン)のレポート、新しいトラクトの情報なども紹介しています。
会員の方には毎月送付しています。また、いのちのことば社のホームページでも紹介をしています。