映画「パリの家族たち」ーー近づく“母の日”にまつわるそれぞれの母親との関係と女性の在り方の物語たち
女性大統領、小児科医、ジャーナリスト、大学教授、舞台女優、母国に息子を残し出稼ぎに来ているアジア女性、花屋で働く娘…。近づいている”母の日”にまつわるそれぞれの女性たちと母親との関係、母になることの怖れと決断などが機微豊かに描いていく心和む物語たち。メーンテーマは、女性たちの母親との関係性だが、女性たちの社会でのステータスと仕事の在り方などそれぞれの人生観が透いて見えて響いてくる群像劇。
【あらすじ】
5月のパリ、母の日が近づいている。強いリーダーシップが高く支持されていた女性大統領のアンヌ(オドレイ・フルーロ)だが、自分でも予想外だった妊娠・出産を経て大統領選挙二期目をめざして出馬するかどうか注目され、大統領の重責と子育てのはざまにアンヌ自身も揺れる。そんなアンヌを夫のグレゴワール(ギュスタヴ・ケルヴェン)は家庭でもファーストジェントルマンとしても寄り添い支えていた。アンヌは母の日のテレビ出演で自らの決断を表明する…。
シングルマザーでジャーナリストのダフネ(クロチルド・クロ)は、仕事最優先の日々を送り、子どもたち二人の姉弟はベビーシッターのテレーズ(カルメン・マウラ)に心を開きなついている。反抗的な思春期の長女の対応に悩むダフネにもテレーズは親身に寄り添う。ダフネの妹ナタリー(オリビア・コート)は独身の大学教授。アメリカで母の日制定を提案したアンナ・ジャービスについて講義する一方で、教え子との恋愛を愉しんでいる。ダフネとナタリーの姉イザベル(パスカル・アルビロ)はやはり独身の小児科医だが、養子を得てワーキングマザーになろうかととも考えている。それぞれに自立し社会的地位をもつ三姉妹だが、認知症が進む母ジャクリーヌ(マリー=クリスティーヌ・バロー)との関係はそれぞれに傷つきトラウマを抱えている。その母親をどのように面倒を見ていくか話し合うのだが…。
病気を患っていた舞台女優のアリアン(ニコール・ガルシア)は、心機一転し、新たにタップダンスの習得にチャレンジし、さらに充実した人生を歩もうとする。だが、健康を気遣う息子スタン(バンサン・ドゥディエンヌ)の過干渉がうざったい…。そのスタンは、花屋の娘ココと付き合っているが、母アリアンのことが気になりココからの電話にも出なくなっていた。音信不通状態のスタンのことが気にかかるココ、体調に変化が気になり自己検診すると妊娠している。それをスタンに話すべきか、産むか産まぬか悩みに悩み選択した結論は…。
ココと同じ花屋で働くジャック(パスカル・ドゥモロン)は、亡くなった母親との思い出のなかに生きている。ジャックに道で声をかけた中国人娼婦は、息子の将来のために国を出てきている。彼女の今の生きがいは、息子とスカイプで会話を交わすことだけだ…。
【見どころ・エピソード】
それぞれが各人各様に、母親との関係を想い、恋をし、大切な人との想いを大切にしながら幸せを探し求めながら人生を歩んでいる。仕事の責務と家族・子育ての在り様に悩む女性大統領アンヌと三姉妹の描き方が強く印象に残る。日本でもシングルマザー、ワーキングマザーが増えているなかで、三姉妹が“母の日”に実行した選択が切実に響いてくる。
原題は“母の日”。日本では、アメリカの制定にならって毎年5月の第2日曜日にお祝いするが、フランスでは5月の最終日曜日と定められています。しかも、その日がペンテコステ( 聖霊降臨の祝日)と重なる年はは、6月第1日曜日に移動される決まり。大学教授のナタリーが、母の日を提唱したアンナ・ジャービスと母アンの関係を講義しながら、制定された後に世俗化されせていく情況を嘆き母の日の廃止を訴えていく経緯やアンナ自身の生き方に触れていくシークエンスが心に残る。【遠山清一】
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール 2018年/フランス/映倫:G/原題:La fete des meres 配給:シンカ 2019年5月25日(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMほか全国順次公開。
公式サイト http://synca.jp/paris/
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