[レビュー3]「私的な祈り」と「公的な祈り」が教会形成に関わる 『祈りの諸相』
本書は、毎年恒例となっている聖書宣教会の夏の研修講座の講義録で、今回は(2018年度開催講座)教師ら7人が旧新約聖書に基づいて「祈り」をテーマに考察したものである。祈りに関する書物の多くは個人的な祈りに関するもので、公同の祈りに関して簡潔に整理されたものを目にすることはあまりない。その点、私にとっては、「礼拝における公的祈りのあり方」を聖書全体と教会史的な視点で示唆がなされている最終章が、牧会者としての自分自身に対する再吟味と預かった群れに対する教育という意味で特に教えられるものであった。
7人の教師による講義録は、「詩篇から祈りを考える—賛美とのろい—」「死者への祈り」「ダビデの祈り」「ルカの福音書における祈り」「主の祈り」「牧会者の祈り」「礼拝における公同の祈り」という順序で構成されている。多くの信仰者が倫理的な疑問を感じたことがあるだろう詩篇の『のろいの祈り』とされることばの真の意味が探られている。また、死者に祈ることの間違いを聖書から正してくれる。
あるいは、よく知られるダビデの祈りを詩篇からではなく詩文的散文(サムエル記)から学ぶことを通して、状況がより具体的である散文ゆえに祈りの目指すものが鮮やかに見えてくることを示唆される。またルカの福音書の祈りでは、共観福音書、使徒の働きとの関連において釈義研究し、イエスが地上において最も大切にされた祈りの姿勢を教えている。そして「主の祈り」においては、『聖書 新改訳2017』の改訂を通しての研究成果から、使用されている翻訳のことばの理由が説得的に説明されている。さらに、牧師や教会によっては長老・役員が担う「牧会祈祷」が教会全体の励ましとなるように整えられていくことを願わされた。
私的な祈りと公的な祈りの相互関係は、日々の神との交わりとみことばが語りかけるように生きたいと願う信仰者の誠実さの現れとなって教会を建て上げていくことに繋がっていると、改めて思わされた本書であった。
(評・松元 潤=日本福音キリスト教会連合若葉キリスト教会牧師、北海道聖書学院々長)
『祈りの諸相〜聖書に学ぶ〜』聖書神学舎教師会編 いのちのことば社 2,160円税込 B6判
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