職業生活全体が宣教に 世界110か国900人が参加。6割以上「非教職者」 ローザンヌGWF開催

写真=多様な領域の人々が集った。ステージではペインティングも

世界ローザンヌ運動で初となる「職場」をテーマとしたGlobal Workplace Forum(以下GWF)が6月25〜29日にフィリピン・マニラで開催された。世界110か国から900人が参加。そのうち65%は牧師や教職者など教会関係者ではない「クリスチャン社会人」だった。日本から参加した2人に大会の意義と日本での展開の可能性をレポートしてもらった。

つながり、アイデア共有
土畠智幸(医療法人稲生会 理事長)

 今回、日本ローザンヌ委員会のご推薦をいただき、GWFに参加することができました。私は普段、医師として医療法人の運営をしていますが、所属教会の役員も務めています。その他、友人である陣内俊兄(NGO「声なき者の友」の輪[FVI])と2017年より「世にあって弟子として生きるクリスチャン社会人のための週末合宿」(通称:よにでしセミナー)を年1回開催しており、今回のGWFも陣内兄とともに参加しました。

 社会人がその人生において職場で過ごす時間は9万時間とも言われます。ローザンヌ運動からの提言として2010年に出された『ケープタウン決意表明』(日本語訳は日本ローザンヌ委員会、いのちのことば社)の「真理と職場」には、このように書かれています。「聖書は、私たちが様々な召しにおいて神に仕えるという意味で、私たちの職業生活全体をミニストリーの領域内に含めている」、しかしながら「職場には伝道と変革のための膨大な機会があるにもかかわらず、この機会をとらえるために信徒を整えようというビジョンを持った教会は少ない」。GWFは、この課題に対する具体的な行動として開催されました。

 会場は、マニラ都市圏のオーティガスという地域にある教会でした。初日の夜は『God at Work』という著書のあるディビッド・ミラー師による講演から始まりました。2日目からは、毎朝の賛美に続いて聖書講解の時間です。今回は、ダニエル書1〜6章を通して、異文化におかれたクリスチャン社会人の姿勢について学びました。毎回、テーブルディスカッションの時間があるのですが、私はCEOの集まるテーブルに割り当てられ、世界中でキリスト教団体あるいは一般企業のCEOを務めている兄弟と分かち合いをしました。午前の後半は、「職場」に関する様々なテーマで、証しやパネルディスカッションが行われました。

 午後は多くのセミナーが用意され、参加者が自らの活動について報告し、セミナー参加者とともに議論します。私は参加できなかったのですが、サイトビジットではテーマごとにマニラ各地の視察が行われていました。その他、「ラーニング・ラボ」というものがあり、テーマにそって小グループで議論する時間もありました。

 私は医師として障害者医療に関わっていることもあり、3、4日目の午後には「障害」をテーマとするラーニング・ラボに参加しました。世界各国で障害者ミニストリーに関わる、あるいは関心をもつ兄弟姉妹たちと長時間の議論を行い、今後もメールなどでのやり取りを通して「白書」のようなものをまとめていく予定です。夜になっても、様々なテーマでの講演が続きます。今回、ステージの横では、クリスチャン画家によるライブペイントも同時に行われていたほか、事前学習や会議中にも動画が多く用いられており、ケープタウン決意表明にも書かれている「芸術・メディアと宣教」についても学ぶ機会となりました。

 GWFに参加しての感想としては、自らの学びになったということはもちろんですが、それ以上に世界各国から集まったクリスチャン社会人の兄弟姉妹たちと交わりを持てたことがとても有意義でした。ローザンヌ運動は、「組織」ではなく「運動」。その運動を形づくるのは、兄弟姉妹同士の「つながり」とそこで共有される「よきアイデア」。そのことを強く感じました。私自身は、教会の活動も医療法人での活動も広い意味での「宣教」と考えています。今回のGWFには医師や看護師も多く参加しており、そこでできたつながりがグローバルな視点での医療を通した宣教にもつながっていくのではと期待しています。

 今年の「よにでしセミナー」は11月22〜23日に淡路島で開催予定です。日本でクリスチャン社会人として社会に奉仕する兄弟姉妹にも、今回の会議のことやローザンヌ運動のことを伝えていきたいと思います。

二元論こえて神の働きに
陣内俊(「声なき者の友」の輪カタリスト)

 FVIは17年から「よにでしセミナー」というインタラクティブな一泊の合宿研修を開催してきました。日本ローザンヌ委員会の後援を受け、ケープタウン決意表明をテキストとして参加者に事前に読み込んでもらい、ケースに基づく濃密なディスカッションを重ねることで、「世にあって弟子として生きるための批判的思考力」を養います。GWFに参加したのは、「よにでしセミナー」の深化のヒントにつながる何かを得られると期待したからでした。

 GWFではセッションごとに5〜7人ほどのスピーカーが登壇し、様々なトピックについて語りました。深く神学的洞察に根ざしながら、現代社会の様々な問題に対して「仕事・職場」を切り口に、最先端・最前線で取り組んでいる人々の現場の声を聞ける機会は希有なものでした。

 具体的には環境問題、貧富の格差、情報化社会における混乱や抑鬱、女性の権利、子どもの権利、国際政治の混乱などの問題に対し、ダニエル書の講解を軸としながら、被造物ケアー、聖書的な雇用(職場)の創出、情報ツールの宣教への利用、女性・子どもの神学、教会の「預言者」としての働きなど、聖書的かつ実践的なアプローチが具体例と共に紹介されました。

 また、「専業主婦は子どもを育てるという意味で世界を変えている。家庭もまた職場なのだ」、「仕事は最高の召命だ。しかしフルタイムの牧師や働き人がいなければ私たちはここにいない。彼らも大切なのだ」というメッセージや、「障害者の尊厳と社会的包摂」など、社会のいかなるセクター・人々も「Workplace」から除外されないよう細心の注意が払われていました。

 GWFに出席したことで、今年の秋に第三期の開催が予定されている「よにでしセミナー」の向こうに広がるフィールドの広がりに関して見晴らしが良くなり、さらに遠く、深くまで「届いていく」という決意を新たにされました。。マニラで出会った様々なアイデアは、よにでしセミナーを含め、FVIがこれから包括的な宣教の領域で日本の教会に仕えていくために、様々なアイデアの種を与えてくれるとともに、これまでしてきたことの背中を押してくれるような集まりでした。
900人の参加者のほとんどが様々な職域で働くビジネスパーソンや起業家たちです。この集まりが今後のキリスト教の宣教の在り方をさらに豊かにしていく「うねり」を起こしていくという期待を抱きました。日本の我々もまた、彼らから良い影響を受け、「聖俗二元論」という壁を乗り越え、連帯しながら福音の働きを推し進めていく同志として、神の国の働き人たちがあらゆる領域で力強く用いられていくことを願います。

 GWFの記録や資料はShttps://www.lausanne.org/gwfから。「よにでしセミナー」の詳細については、FVIのホームページからShttp://karashi.net/