台風19号で各地に被害 川越キングス・ガーデン浸水 床が一面泥で覆われ

10月12、13日に東日本を縦断し、記録的な大雨をもたらした台風19号は、各地で河川の決壊、大規模な洪水被害が発生。教会や信徒宅、キリスト教の高齢者施設やキャンプ場にも被害をもたらした。それに伴い、支援募金窓口を設置したり、ボランティアを募集するなど、キリスト教会で支援の動きも始まっている。【本紙特別取材班】(8面に関連記事)

浸水と救助の様子が各ニュースで報道された、約100人の高齢者が入居する埼玉県川越市小坂の特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」は15日朝、ようやく水が引き、施設内、周辺の復旧作業が始まった。職員、業者、関係者によるボランティアが作業や連絡対応に奔走していた。
台風19号が関東方面を通過した2日後の15日午前、記者は同所を訪ねた。現場にはJR川越駅からシェアサイクリングサービスを利用し、自転車で現地へ。20分強で到着した。
川越市中心部は、いたって平穏だった。蔵屋敷のあたり一帯は、その日も観光客で賑わっていたが、被災地帯との意識のギャップは気がかりだ。西北部の郊外に行くにつれ、田んぼの水たまり、まき散らされたワラなど、被害の跡が目立ってきた。19、20日に開催される川越まつりの時は、もっとギャップが生まれるだろう。
景色が一変したのは、入間川の支流小畔川を越えてから。泥水の跡が目立った。さらに川越キングスガーデンがある一帯は、低地のため前日まで水が溜まっていた。その日は、泥水が引いたばかりで、ぬかるみが舗装道を覆っており、また行政や業者の車が頻繁に出入りしていた。
特養ホームの中に入ると、床は泥で覆われ、棚、椅子、机などがひっくり返り、障子なども破れていた。A、B棟は水につかり、やや高い位置にあるC棟にも水が迫ろうとしていたという。渡辺圭司施設長は、C棟との連絡通路を指差し、「6段ある階段の2、3センチ下まで水が迫っていた。近隣の増水の危険を察知すると、まずA、B棟の方々をC棟に移動した。しかし段々と水位が上がり、C棟も床上浸水の恐れがあったので、さらに2階に移動した。途中で電気が止まり、エレベーターを動かせなかったので、職員がご利用者様を抱えて階段を上り、お運びしました」と話した。
13日には、入居者は消防、警察のボートで全員救出され、いったん近隣の避難所の小学校に移動。そこからその日のうちに市内の介護施設などに受け入れてもらった。入居者に疲労はあるものの、大きな体調不良などはないとのこと。15日から施設内部に入れるようになっため現状確認をし、電気、水道、ガス、電話などの配線の状況を業者に調べてもらうという。
隣接するケアハウス主の園はやや高台にあったが、1階部分が浸水した。厨房、事務室などにも被害があった。むしろ、浸水によるスピリンクラーの故障で、いくつかの部屋で消火用の薬剤が散布されたことが問題となった。「ある部屋では天井がはがれたり、ぬるみのある液が廊下にも流れ、転倒する人もいた」と同施設管理者の鷹野みさきさんは当時の様子を語る。
入居者は、2階以上に上がってもらい、空き部屋などで一夜を過ごした。14日には、いったん避難所に移動したのち、近隣の施設、教会、家族、友人知人宅に分かれた。
15日午後に現地を訪問した筑波キングス・ガーデン施設長の宇都宮和子さんは、「川越は、20年前にも施設の建設中に水害があり、3㍍のかさ上げ工事をして建設した経緯がある。その時すでにその隣りにあった『主の園』は少し高台だったので、その時は浸水を免れたが、今回は浸水した。利用者は近くの小学校などに避難したが、学校も始まったので、ご家族のもとに帰るなどしている。電気も完全復旧はしていない。高圧洗浄器も持って行ったが、発電機で使うような状況だ。復旧には1か月以上はかかるだろう。その間、施設としては収入がないので、経営的な問題も発生する」と話した。
川越キングス・ガーデンは15日夜、復旧ボランティアセンターを開設した。責任者は片岡正雄理事長。現在、同施設の電話回線が不通状態のため、ボランティア希望者は、川越キングス・ガーデン協力牧師会から、集合場所、時間、持ち物などについて、同フェイスブックで順次報告予定。 問い合わせは、Tel080・3453・5430(受付時間午前8時〜午後6時)。Eメールkawagoekgpastors@gmail.com 申し込みフォームはURL https://forms.gle/QsLqeUfUhN7bbRJK7