11月10日号紙面:大切なものを多く失った 教会堂が2階15センチ浸水 日基教団・川崎戸手教会
大切なものを多く失った 教会堂が2階15センチ浸水 日基教団・川崎戸手教会
15号、19号など立て続けに日本全土を襲った台風は、日本全国各地に被害をもたらしている。神奈川県、栃木県、福島県、長野県などの教会関連施設、信徒宅の浸水被害も大きかった。長野県では支援のために、長野県北部の牧師会の協力により災害対策室が立ち上がった。
神奈川県川崎市の多摩川河川敷(堤防内)で、和解や共生の福音の働きに尽力してきた日基教団・川崎戸手教会(孫裕久牧師)の教会堂、通称「ヨルダン寮」が建物2階15㌢まで浸水。大量の土砂が教会前まで埋まった。台所機能(流し台、ガスコンロ、冷蔵庫)などを失い、家具類、写真、資料類も泥まみれだったが、YMCAや教団、学校関係などからボランティアが入り、清掃が進んだ。孫牧師は、随時教会のホームページ(Shttp://tode-church.net/)で状況を発信しているが、14日には「大切なものを多く失った。中にはお金で解決できないものもある」とコメント。大切なものを廃棄しながら、自分を捨て十字架を背負う聖書の言葉(マルコ8章34節参照)を思い浮かべたという。災害の意味を問うのではなく、「ただ困窮する人と共に働き、祈りを合わせる所に神がおられるのだと信じます」と述べた。
11月初週には、YMCAのボランティアとともに、車が入りづらい場所のゴミ出しの作業などをする予定。1階天井に堆積した泥を取り除くため、天井をすべて取り外す作業も実施する。聖書・賛美歌やオルガン、洗濯機などが使えなくなったが献品された。冬に向けて、ストーブなどが必要になっている。
2020年10月完成を目指して新会堂建設の計画があり、ヨルダン寮を取り壊す予定だった。被災後、一度はヨルダン寮使用を断念し、河川敷から離れた牧師館(堤防外、新会堂予定地)に移ることが検討された。だが10月27日の協議で、ヨルダン寮を修復し使用する可能性について再検討された。「来年に立ち退きを控えながらも、この河川敷で暮らし働いて来られた方々は再建し残された時間をこの河川敷で生きていかざるを得ない。我々は来年新会堂をするからといって、この状況でヨルダン寮を諦めるのはどうか。教会の中でも議論があり、修復できるならば、あと一年使っていきたいという声が出た。たくさんの人が支援して、清掃してもらった。あと少しで取り壊すものを今修復するのは愚かである。しかし宣教とはその愚かさであり、これが共に生きるということなのだ」と話す。
同教会は、「戦責告白の実質化」を宣教方針の基礎に据え、「聖書による独立・神と人への奉仕」を日毎の務めとし、関田寛雄牧師(現教団神奈川教区巡回教師)の開拓伝道によって1967年にその歩みが始まった。戦後行き場を失い、多摩川河川敷で暮らしていた在日朝鮮人家族との出会いから、ヨルダン寮に教会堂を移転。河川敷の人々と共に歩んだ。旧伝道所は現牧師館。河川敷に暮らす最後の人が生活再建し、河川敷が再開発されることとなり、その一つの役目を終え、新会堂建設に進むところだった。
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川崎市の日基教団・向河原教会(石丸泰信牧師)は、会堂で床上5㌢浸水。現在、床下を乾燥させている状態だ。エレベーターが水没したが、モーターが下部にあり動かない。「動かさないと水を引けない状況。しかし水を抜かないとモーターを動かせない。別の方法で水を抜き、動くかを確認します」。礼拝堂は2階だったので無事だった。牧師館も床下浸水があった。土間まで水が来ていたので、水を掃き出した。
台風19号が過ぎ去った10月13日日曜朝は、地域一帯が泥でまみれていた。「皆が清掃している中、教会だけ礼拝するのはどうかと思った。だが、朝7時前から教会員が集い、教会のみならず周囲の道路も清掃した。『自分たちの大切な礼拝をすることは可能ではないか』と実施。皆泥だらけでの礼拝で、大変な中だが楽しさ、うれしさがあった」と石丸牧師。「様々な支援で、教会が愛されていることを実感できた。勤務している横須賀学院の教師や生徒らが支援してくれた。中には教会に親しみを持ち、連日支援に来る生徒らがいる」とも語る。
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これから復旧への必要が生じてくる。「教団の会堂共済では15㌢未満は出ないので、費用をどうするか。業者にすべて頼むと大変なので、どこまで自分たちでできるか。工事見積もりを見て考えなくてはいけません」
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福島県中央部(中通り)は、阿武隈川の氾濫により広範囲で浸水被害があった。本宮市にある日基教団・本宮教会(安井潤牧師)では、木造の会堂に2㍍40㌢浸水。隣接する本宮幼稚園も浸水被害。「牧師の父は90歳になる」という息子の徹さん(本宮幼稚園副園長)は「建物は壊れていないが、聖書、賛美歌集をはじめ、書類はすべて使えない。ヒムプレーヤー、ピアノ、オルガンも壊れた。椅子、床などを洗い、会堂を開けてかわかしている状態。電話の子機も一部使えない。ファックスも使えない。何が必要かとも言えない状況。片付けながら『あれがない、これがない』と分かってくるのだろうと思う」と現状を話す。礼拝は教会員宅で実施した。高台に住む人は被害を免れたが、中心部の市街地は浸水した。「水道は通ったが、地下のタンク、床暖房がボイラーもだめになり、使えなくなった」と寒さが来る冬を心配する。「幼稚園も1階がやられ、椅子、机も処分した。ピアノ5台が使えなくなった。近隣の施設を借りて、午前保育を続け、11月からまた別の場を借りて、保育を復旧する」と述べた。
栃木県栃木市のミッションあどない・いるえ(代表牧師ピーター藤正信牧師)は、復興礼拝を10月27日、支援活動に参加しているボランティアや近隣のクリスチャンなどと共に実施した。「息子の家具店を風間デイビッド哲也牧師らが修復してくれた。家具店の裏の建物で普段礼拝をしていたが、そこが床上浸水の被害を受けて使えない。修復し始めた家具店で礼拝をした」と藤牧師は話す。
当日は藤牧師がエゼキエル10章1節から「キリストにある四つの召し」と題してメッセージ。「キリストを信じることで、キリストの霊を私たちは迎えている。キリストの召す召しの中で、クリスチャンは成熟していかなければならない」と述べ、四つの召しを勧めた。一つ目は「人の子」。「キリストのようにへりくだり、父なる神、人に仕えたい」。二つ目は「子羊」。「キリストが死なれたように、弟子は誰も十字架を負い、一粒の麦のように自分に死んで、愛の実など御霊の実を結んでいきたい」。三つ目は「勝利者」。「聖書はキリスト信者が信仰の勝利者になるよう勧めている。それは毎瞬間自分の意思で罪の誘惑と悪魔に打ち勝たれたキリストに従い続け信仰の戦いに勝ち続ける者になっていくことである」。四つ目は「王の王」。「私たちはキリストにあって自我の世界、悪霊の世界、天使の世界、動物の世界、死の世界、鉱物と科学の世界、宇宙と気象の世界を御国の前味のように支配していく者として召されている」と話した。
祈りの課題として、「栃木市で1万3千戸と、かつてない規模の被害があった。物だけでなく、魂の問題もある。人々が本当の神を求めることができるようにお祈りしてほしい」と願った。