教皇フランシスコの来日に注目が集まった。環境問題、貧困格差、武器輸出、生命、家族倫理。特に日本に関わる所では核廃絶など社会的な問題についての積極的な発言や行動をすることでも知られている。今年は同じフランシスコの名を持つザビエル来日470年でもある。イエズス会出身の教皇はもともと日本宣教も志していた。それは個人としては実現しなかったがアルゼンチンの神学校校長として多くの宣教師を日本に送ってきた。

 『教皇フランシスコがあなたに知ってほしい10のこと』(ジョン・L.アレン・ジュニア著、女子パウロ会訳・出版、660円税込、新書判)は簡潔に教皇への考え方やメッセージを伝える。社会派と見なされがちな教皇だが、教会とNGO、政治団体などとは違うと教会の役割を明確にし、霊的な取り組みを伝える。

「教皇フランシスコ 別冊『カトリック生活』教皇来日記念号」(ドン・ボスコ社、880円税込、B5判)では、教皇の生い立ちを年表や関係者によるエピソードで紹介。就任後の様々な場面での発言(第一次世界大戦100年、原爆投下70年、国連演説、神父児童虐待問題)、識者による教皇の取り組みについての評論などにより現代的、聖書的なテーマを深めていける。また歴代教皇の光と闇、バチカンの成り立ち、組織、外交についても詳しい。

 教皇クレメンス11世の命を受け、1708年、禁教下の日本に潜入したイタリア人宣教師シドティについては、尋問した新井白石の『西洋記聞』で知られる。没後300年の2014年には、その骨が東京で発掘された。彼に洗礼を受けたと思われる日本人2人の骨もいっしょだった。『ジョヴァンニ・バッティスタ・シドティ 使命に殉じた禁教下最後の宣教師』(マリオ・トルチヴィア著、北代美和子、筒井砂訳、髙祖敏明監修、教文館、2千640円税込、四六判)は、その生涯を日本、ヨーロッパの関係史料から再構成する。アジアではマニラで神学校を創設。マカオを経由して日本に来た可能性もある。宣教の情熱が伝わるシドティ自身の書簡も収録する。長崎において当時のオランダ人とシドティの間には緊張、憎悪関係があった。幕末に『西洋記聞』を再発見したのが、米国オランダ改革派教会宣教師ブラウンだったのも興味深い巡り合わせだ。

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