本書は文字通り「古代教会史入門」の書であるが、多数の写真や図が盛り込まれ、大変、興味深く読み進められる構成になっている。「当時のシナゴーグの図」(31頁)や、十字の形をした発掘された東方教会の洗礼槽の写真(120頁)など注意をひく。

 また、本文の「注」も充実していて、教会史に造詣(ぞうけい)が深い読者であっても大いに啓発されるだろう。例えば、シナゴーグに関して「『シナゴーグ』はギリシア語の『集会所』に由来し、ヘブル語の『祈りの家』という概念を含んでいる。安息日になると人々はシナゴーグで礼拝し、安息日以外は、地域の学校や集会所、地方政治を行う施設として使用された」(101頁)と解説されており、「十字を切る」については「迫害時代に、人目につかないよう、額や口、胸などに、そっと十字架のしるしを手を使って切り、信徒同士、互いに信仰を確かめ合い、励まし合うために行われていたもの。キリスト教が公認されるにしたがって、大きく堂々と十字架のしるしを切るようになった」(110〜111頁)と詳述されている。

 著者がとりわけ古代の信仰のスタイルから、現代への課題とチャレンジとして訴えるのは、〝信仰の基準”を謳(うた)う信仰告白の重要性であろう。プロテスタントの試金石ともいえる〝聖書のみ”を主張する宗教改革者たちも、その一方で「使徒信条」を用いて健全な教会形成を果たしたと述べる。この信仰基準の内容には、父・子・聖霊の神の御業、イエス・キリストにおいて実現した神の救いの出来事が含まれ、「それゆえ、父と子と聖霊の御業を統一的に信ずる信仰は、旧約聖書と新約聖書を統一的に解する聖書理解へと、必然的に向かわせます」(123頁)と結論づける。

 その意味で、信仰告白と聖書と教会の三つは、決して切り離すことのできないもので、信仰告白を疎かにするならば、聖書解釈も教会形成も人間的で恣意的なものにならざるをえないと著者は警鐘を鳴らす。信仰告白の重要性を、現代の日本の教会に改めて問う書である。

評・丸山悟司=日本バプテスト教会連合御園バプテスト教会牧師

キリスト教の“はじまり” 古代教会史入門

吉田隆著、いのちのことば社、1,540円税込、四六判

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