試合でも信仰は大きな支え 元オールブラックス代表 ティモ・タガロアさん ラグビーがすべて。だが心に空しさあった

2019年の9月20日から11月2日まで、日本の12都市で熱戦が繰り広げられた「ラグビーワールドカップ2019」。史上初めて日本代表が予選を突破し、ベスト8に入るなど、日本中がラグビーで盛り上がった。そんな中、来日したのが、西サモアとニュージーランド(愛称オールブラックス)代表として活躍し、日本プロリーグのトヨタ自動車ウェルブリッツでもプレーをしたティモ・タガロアさんだ。タガロアさんは各地でラグビークリニックやトークショーを通して、ラグビーと福音の素晴らしさを伝えた。 【中田 朗】

タガロアさんのポジションはレフトウイング。ウイングは足の速さを生かして外側からトライを狙うトライゲッターだ。日本代表で言えば、福岡堅樹選手、松島幸太郎選手が担ったポジションで、自慢の快足を飛ばして一気に加速し、トライを狙う。現役の頃のタガロア三の映像を見ると、タックルに来る相手選手を振り切って走り回り、トライする姿が見られた。1991年のワールドカップでは、西サモア代表として、アルゼンチン戦で二つのトライを決め、ベスト8進出に貢献した。
「今では試合のやり方が大きく変わった。今の選手は私たちの時よりも体格が大きくなっている。私がプレーをしていた時よりも強くなっている。試合のやり方も変わりました」
「ラグビーはよりプロらしいスポーツに成長した。だが、多くの選手がフィールドの内外で問題を抱えている」とタガロアさんは言う。「特に引退した選手は、自分のエネルギーを失い、落ち込むようになってきた。私も落ち込むようになった。私のアイデンティティーがすべてラグビーにあったからです」
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小さい頃からラグビーを始め、「若い頃、ラグビーは私の人生のすべてだった」と言うほど、ラグビーに熱中。めきめきと力をつけ、10代の頃にはナショナルチームのメンバーに選ばれた。「ラグビーでとても成功した。ナショナルチームのメンバーに選ばれたことを、とても誇りに思っていました」
一方、試合に対するプレッシャーと、試合以外でパーティーを楽しむ生活に葛藤を覚えるようになった。「ラグビーではかなり高いレベルでプレーをしていたが、私の心の中にはいつも空しさがありました。メディアは、試合でいい結果を出すと、『すごくいい選手だ。自分の子どもに〝ティモ〟と名付けたい』と報道する。良くない結果を出すと、『何で選手やっているんだ。うちの祖母のほうがいいプレーするぞ』と言う。新聞は事実でないことを書くこともあった。『他の人が自分のことをこう思っていたのか』と考えると、本当につらかった」
19歳の時、「あまりに落ち込みが激しく、悲哀感から自殺を考えるようになった」とタガロアさん。幸いに、実行にまでは至らなかった。
ある日、高校の友人が教会のセミナーに誘ってくれた。「そこで、イエス・キリストと神の愛について知るようになった」という。「教会で天国の話を聞いた。牧師は私に『もし今、地上の命が終わったら、天国に行けますか』と質問した。最初は答えることができなかったが、神を信じて、心に大きな平安を持った。以来、私の心は充足し、人生の目的を知り、喜びに満たされるようになった。人々がどう思うかも気にならなくなった。こうして私はどんな状況でも同じ気持ちでプレーできるようになったのです」
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タガロアさんにとって、信仰は試合でも大きな支えだ。「チームやコーチからも力をもらうが、神様からそれ以上のものをもらう。コーチは『チーム一丸になって国のために戦おう』と言うが、私はそれ以上のものがあったと考えています」
試合前は静かな場所に行って神様と会話をし、「怪我から守られるように。チームが守られるように。自分のプレーを通して神様の栄光が他の人たちに伝わるように」と祈る。試合では、手首にしているテーピングに十字架と「あなたがたはキリストのもの、キリストは神のもの」(Ⅰコリント3・23)という御言葉を書く。そして、それを見ることによって、誰のためにプレーしているのかを確認するという。 
今回の来日では、いろいろな場所に行って、ラグビークリニックをし、福音を伝えてきた。またオールブラックスが試合前に行うニュージーランドのマオリ族の民族舞踊「ハカ」を演じ、人々の喝采を浴びた。
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日本の印象についても語ってくれた。「日本は仕事をメインに考える人が多い。日本人は忙しく働いている人が多く、みな疲れ切っている。子どもも勉強で忙しい。特に目立ったのが、ラグビーを喜んでプレーしていないということ。そこに喜びが見られないというのが、とても悲しい。それを変えていきたいと思いました」
「私も日本でプレーをしたが、日本人はとても優しく、もてなしの精神が素晴らしい。どれだけ人に尽くそうとしているか見ることができた。同時に、表向きにはそう見えても、内面はやはり孤独なのかなと思います」
「教会はぜひスポーツを用いて子どもたちに届いてほしい」とタガロアさん。「教会がスポーツを通して、神様を知ってもらうということはとても大切だ。教会がラグビーワールドカップやオリンピックを用いて、地域にどんどん出て行ってほしいと思います」