5月24日号紙面:【新型コロナ関連】「交わりの意味の再考を」教会はどう生きるべきか アジアンアクセスがウェビナーで討論
コロナ禍の長期化 教会はどう生きるべきか アジアンアクセスがウェビナーで討論
写真=左から播、高澤、小平の各氏
新型コロナウイルス感染拡大、緊急事態宣言延長を経て、会堂、集会を中心とした教会の活動の在り方が根本的に問われている。オンライン活動に着手した教会も多いが、「教会とは何か」「牧師とは何をする人なのか」などの問いがこの状況下で起こり始めている。宣教団体アジアン・アクセスジャパン(AAJ)がオンライン(ウェビナー)による新型コロナウイルス対策セミナー「教会はこのとき、どのように生きるべきなのか?」を5月5日に開催した。牧師を中心に全国、海外から90人以上が参加。パネリストの発題に参加者がチャットで応答、質問、随時アンケートへ回答するなどして実施された。【高橋良知】
比較や技術だけではなく
司会のAAJナショナルディレクターの播義也氏は今後のコロナ問題のフェーズ(段階)の変化を、災害支援の知見をもとに整理。①救済(2月から緊急事態の現在まで)、②救援(特効薬の認可)、③回復(ワクチン開発)、④復興(世界保健機関による収束宣言)の四段階に分けた。ハーバード大学の研究成果から「2022年まで感染流行が続く」という予測も紹介し、「『新しい生活様式』も言われる中、新しい教会生活、信仰生活をどう考えるべきか」と問いかけた。
AAJ理事長の小平牧生氏の牧会する教会では、阪神淡路大震災後に会堂に集まって礼拝できない期間があった。一つの会堂での礼拝の在り方を問い直し、複数会堂、家庭集会など、少人数のコミュニティー形成に取り組んだ。「小さい細胞一つだけでは存在できない。いかにつながり、全体が機能するかは今も模索している」と述べた。
オンライン礼拝については、「デジタル技術を有効に用いなくてはいけないが、それは前提ではない。仮に技術が足りなくても心を込めて礼拝することを励ますことが大事。イエスの名によって祈り、イエスの臨在があれば、牧師がいない礼拝でも遜色はないはずだ。教会の歴史の中では牢獄や迫害の中でそのように礼拝をしてきた。今後日本では牧師不足が予測されているが、それに備える機会になるのではないか」
復興へのフェーズについて、「今は、いのちを守る段階。復興をあせってはならない。これからのことは誰もわからない。教会の持ち味を発揮できる段階まで備えていたい」と話した。
一方、教会の復興の段階にはばらつきがあることも指摘。「格差、差別、焦りにならないようにしたい。長い道のりを一緒に歩み、戦っていく覚悟をもちたい」と励ました。
AAインターナショナル副総裁の高澤健氏は「この状況について、自分、教会、世界に向けて神様がどのような意図をもっておられるかを真剣に考えたい」と話した。
「牧師は『あの先生は』、『あの教会は』と比べて気持ちが上がり下がりしがちだ。神様がこの状況をどう取り扱うかを考えるよりも、周りの対応が気になってしまえばサタンの思うつぼ」と警告した。
「問題は経済、社会、家族の在り方、政治など何層にも重なる。危機の中であらわになる教会の強み、弱みが何を表しているのか考えていきたい」と述べた。
討論の中で小平氏は、「礼拝のやり方ばかり考えがちだが、教会の交わりの意味を再考する絶好の機会だと思う。一つの部分が苦しめば、全体が苦しむということを文字通り一つの世界で感じた。マスクをする、外出をしない、というのは自分を守るためだけでない。自分の行動がすべての人に影響することを実感した。相互依存の社会、相互依存の教会を考えていきたい。教会を考えることで礼拝も決まってくる」と語った。
播氏は「感染症への感覚はそれぞれ違う。地域差、個人差がある中で、どう合意して教会として歩むか。ネット環境のない、低所得者、高齢者など、取り残されてしまう人のことも考えていきたい」と応答した。
高澤氏は、今後の見通しを話す中で、「見落としてはいけないのは『神の時』(カイロス)。その時は場面場面一人一人違う。ある人は収穫の時、ある人にとっては静まりの時かもしれない。その一方で、公同の教会の一部として、普遍的な教会の表れとしての地域教会を考えたい」と述べた。
事前に参加者に実施したアンケートでは、現状について、「オンライン礼拝を通じて今まで届かなった人のところに福音が届いた」など肯定的な意見も多かった。また「神の主権を問い直した」「人間の無力さ、被造物の豊かさを知った」「再臨を意識した」「教会内外の分断が心配」「萎縮、内向きになる」「自由の制限、監視社会、独裁が懸念」といった言及、オンラインのミニストリーや、家の教会の展開を期待する声もあった。
AAJにかかわりがあるアジアの教会の状況なども共有され、オンラインが使える都市と地方の格差、教会がクラスター発生源になる危機などの課題が上がった。
最後に小平氏は「デジタル技術の背景にある思想に注意したい。方法を取り入れるだけでは、教会は影響されてしまう。しっかり考えないといけない。災害支援でも起きたことだが、痛みをプラスに変えようとしすぎて混乱が起こることがある。緊急時は牧師に教会の権限をゆだねる必要があるが、後に混乱をもたらさないよう注意したい。まずは自分を変える機会としたい。その結果、教会、礼拝、伝道が変わるようになっていきたい」、高澤氏は「一人ひとりにいろんな考えがあるが、一人ひとり神様に愛されている存在だ。だからこそ『お互いを愛する』となっていきたい。
独りよがりの愛ではなく、増え広がる宣教につながる愛につながりたい」と語った。
AAJは、今後月一回程度の頻度で同様のオンライン集会を開催する予定。次回は6月9日午前10時から。問い合わせ先はQinfo@asianaccess.or.jp