自らの葛藤と歴史・社会をつなぐ 星出卓也さん(日本長老教会西武柳沢教会牧師)

先輩から育てられた

「政教分離の会」、日本キリスト教協議会靖国委員会、日本福音同盟社会委員会など信教の自由に関する様々な働きにかかわる星出卓也さん。「聖徒の交わりと、先輩方からの学びに感謝」と言う。 牧師になりたてのころ、所属する日本長老教会の先輩、村瀬俊夫さんに「ヤスクニと平和」委員会に誘われた。「1997年に日本長老教会では戦争責任文書作成で、激論があったと聞く。その矢面に立ったのが村瀬先生でした」
「委員会で30代は私一人。一から学んだ。村瀬先生は人を育てる人。今は病床にあるが、蔵書を託す手配をするなど、後輩のことを考えています」
委員長に抜擢(ばってき)され、日本長老教会の大会で同委員会の議案を提出すると、「集中砲火を浴びた。自分の足りなさはもちろんある。しかし教会の中で靖国などの問題を扱うと激論になる。根が深い問題だと思った。社会委員会から議案が出ないときは、スムーズに議論が進む。黙っていれば波風なくものごとが進むかもしれない。しかし自分が黙っていれば、誰も発言しない、という危機感がありました」
「信教の自由や政治の問題は高度な問題。社会問題だけではなく、みなが納得してもらえるように聖書、神学の知識が必要。一年やそこらでは身につかない」
超教派の「靖国神社国営化反対福音主義キリスト者の集い」でも学んだ。その中に、95年の明治学院大学学長時代に戦争責任告白を発表した中山弘正さんがいた。様々な教派から担当委員会の代表が来ていたが、「委員会の任期が終わっても牧師である限り、続けてほしい」と励ましがあった。
同集いでは改革派の長老で、平和遺族会全国連絡会代表などを務めた西川重則さん(7月23日逝去)と知り合った。「勉強会後も電車の方向が同じで様々な話をした。アジアの視点や様々なキーワード、ヒントをもらい、後で調べて本を読んだ。先輩方の語った一語一語に深い意味がある。それらを自分なりに追体験していくことが大事です」
平和遺族会は、戦没者が日本の名誉のために死んだとする「日本遺族会」とは異なり、靖国神社合祀反対、アジアへの戦争責任、平和活動を重視した。先にキリスト者の視点でキリスト者遺族会が設立されたのが発端だ。星出さんもキリスト者遺族会の世話人だが、「コロナ禍と高齢化で集会が難しい。資金も減っている。日本遺族会は次世代に引き継がれる流れがあるようだ」と不安を抱える。
教会、神学の視点については、日キ教会・東京告白教会の牧師だった渡辺信夫さん(3月逝去)からも刺激を受けた。「戦時中教会が戦争に駆り立てられた。それを見抜けなかったことを反省し、教会とは何かを戦後問い続けてきた。その仕事の中で、戦争責任とカルヴァンの『キリスト教綱要』がつながった。教会の抵抗を反戦思想からではなく、教会の歴史の中にみる。ドイツ告白教会のスピリットを東京告白教会に受けついでおられた。時代のウソを見抜くことと教会が真理のみことばに立つことは別のことではないことを学びました」、、、、、

2020年8月9日号掲載記事

【聞き手 高橋良知】