ベイルート大規模爆発 キリスト教各派・支援団体が支援開始 「レバノンに世界の支援を」 感染者急増、経済危機、難民大量受け入れという最悪のタイミングで起きた

レバノンの首都ベイルートで8月4日に起きた大規模爆発。国際NGOワールド・ビジョン(WV)が8月7日に出したリリースによると、この爆発で130人以上が死亡し、5千人が負傷、推定30万人が一瞬にして家を失ったという。ベイルート最古のキリスト教の会堂や、爆心地にあった福音派の教会も被害に遭った。この大規模爆発に対し、各国が緊急支援を開始。キリスト教各派や、各キリスト教支援団体も支援に動き始めている。(8月30日号で一部既報)

【CJC】レバノン政府は5日、2週間の緊急事態宣言を発令。旧宗主国であるフランスのエマニュエル・マクロン大統領は6日、ベイルートを訪問し、フランスからレスキュー隊員55人を派遣するほか、25トンの衛生用品、医療機器、移動式診療所など500人分の治療が可能な設備を航空機3機分輸送することを決定。米国もマイク・ポンペオ国務長官がレバノンへの緊急支援を発表し、他の国々も支援に乗り出しているという。

爆発直後。悲惨な光景(写真提供=WVJ)

ベイルート最古のキリスト教の会堂、アンティオキア正教会(アンティオキア総主教庁)の「聖ゲオルギオス大聖堂」も爆発の被害を受けた。5日には、大聖堂の扉が吹き飛び、木片やガラス片が散乱した聖堂内の写真がフェイスブックに投稿され、2千200人以上がシェア、被災者のために祈るコメントなどが200件以上寄せられた。
爆心地には、福音派のシティー・バイブル教会があった。同教会のマルワン・アボウルゼロフ牧師は6日、ツイッター(英語)で教会の被害を報告。壁が崩れ、窓が吹き飛び、天井の部材が落ち、散乱した教会内部の様子を伝えた。「被害は大きかった。これが礼拝中に起きなかったことにとても感謝している」と述べ、「この町を助けるにはたくさんの働きが必要になる。私たちのため、これから町のために仕える人たちのために祈ってほしい」と呼び掛けた。
アンティオキア総主教庁はウェブサイト(アラビア語)などで4日、総主教イオアン10世がベイルートのエリアス府主教に連絡し、府主教から市内の教会や諸団体の被害状況について知らせを受けたと発表した。エリアス府主教は病を負った人々の癒やしや、死者が安らかに眠りに着くこと、遺族らの慰め、被害を受けたすべての人々のために祈りを要請した。
米ニュージャージー州のアンティオキア正教会北米大主教座は5日、ウェブサイトにメッセージを掲載。「今、世界中で4日の爆発のこと、レバノンの首都ベイルートの上空に昇るキノコ雲の動画が見られている。人々は恐怖に逃げ惑い、家屋は破壊され、多くの人の命が絶たれ、また人生が崩壊した。ベイルートのセントジョージ病院は無力で暗闇の中で被災者の手当てをしている」と伝えた。
カトリック修道会イエズス会難民サービス(JRS)の米国支部は5日、ウェブサイトで、ベイルートとレバノンの人々との連帯を表明し、ベイルートの難民支援のための献金を呼び掛けた。ベイルートにあるJRS事務所は被害を受けたものの、スタッフは皆無事だった。

現地で救援物資を配布(写真提供=WVJ)

†  †  †
WVは緊急支援募金の受付を開始。家を失った子どもたちや人々が食料や避難所などへ確実にアクセスできるよう、現在、12万人を対象とする緊急支援の準備を進めている。
WVレバノンのコミュニケーションマネージャー、ジョセフィン・ハダッド氏は「新型コロナウイルス感染者の急増、自国の経済危機、難民の大量受け入れという最悪のタイミングでこの災害は起きた」と指摘。「爆発はベイルートだけでなく、国全体を揺るがした。WVは1975年以来、地元住民と多くのシリア難民の双方に支援を届けてきたが、被災地に住む家族や子どもたちが心配だ」と話す。
事務局長のハンス・ベダースキー氏は「爆発が起きる前、私たちは難民支援のために食料パッケージを提供していた。だが、それに含まれる生鮮食品のほとんどは輸入品であり、大部分は港を経由してきていた。爆発は、最も弱い立場にある人々に食料を届ける私たちの活動と能力に深刻な影響を与える。国内の在庫が底をつくと、新規の入荷が非常に難しくなるのではないか」と懸念する。
現場の被害状況と支援ニーズを調査したWV支援事業ディレクターのラミ・シャンマ氏は「破壊の状況は、まるで以前の紛争や武力衝突の状況そのもの。この爆発による影響の実態を推し量るのは非常に困難だ。人々は、がれきに覆われた変わり果てた日常風景に、一様に大きなショックを受けている」とし、「支援には、500万米ドル(約5億2千700万円)の資金が必要だ。コミュニティーの再建と人々の回復を支援するためには、国際社会と支援者の方々の協力が不可欠。レバノンはもう十分に苦しんでいる。彼らは強い人々だが、この悲劇を生き抜くためには世界の支援が必要だ」と訴えた。
ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)は「レバノン爆発緊急支援僕金」への協力を願っている。募金申し込みはURLhttps://www.worldvision.jp/news/press/20200807.htmlから。本件に関する問い合わせはTel03・5334・5351、Eメールdservice@worldvision.or.jp
†  †  †
米国に拠点を置き、世界39の国や地域で活動する国際NGО「オペレーション・ブレッシング(ОB)」は、レバノンで活動しているパートナー団体「ハート・フォー・レバノン」と協力し活動を開始。現在、爆発が起きた地域にある教会や礼拝所の災害救援に焦点を当て、ボランティアががれきを片付け、避難所として機能するよう、これらの建物を修理している。
ОBジャパンは、ベイルート爆発事故に対する寄付を募っている。寄付はURL https://objapan.org/donation/から。