母親の介護で実家に帰ったチィファ(ジョウ・シュン) (C)2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.

今年1月に松たか子、広瀬すず主演で公開上映された「ラストレター」の原作者でもある岩井俊二監督が、同じ原作を「ラストレター」の2年前に中国映画として公開された話題作が日本で公開される。30年前、中学生時代だったある姉妹と読書好きの少年との初恋の顛末が、姉が子どもたちに書いた遺書と古い手紙の思い出によって掘り起こされていく。亡き人との恋情をよみがえらせる手紙の存在感に人生の哀愁を癒し支える豊潤さ漂う佳作。

失恋した先輩に姉の振り
して文通するチィファ

上海でコンピュータセキュリティのエンジニアを努める夫ウェンタオ(ドゥー・ジアン)と娘サーラン(チャン・ツィフォン/チィファの中学時代と二役)三人暮らしのチィファ(ジョウ・シュン)。学校が冬休みのある日、実家で両親と二人の子どもたちと暮らしていた姉チィナン(ダン・アンシー)が死んだ。姉ムームー(ダン・アンシー/チィナンと二役)と弟チェンチェン(フ・チャンリン)ら二人の子どもたちには手紙を遺していた。葬式の後、サーラは冬休みの間、祖父母の居る実家でムームーと一緒に過ごしたいという。チィファには、同じ年頃のムームーを思い遣るサーラの気持ちがよく分かる。だが、弟のチェンチェンはチィファの家に居たいという。複雑の想いを汲んで認めるウェンタオとチィファ。

ムームーを実家に送り届けると、チィナン宛に中学卒業30周年記念同窓会の案内が届いていた。同じ中学校を卒業しているチィファは、姉チィナンが死んだことを伝えに行く。だが、会場に着くと姉に間違えられたうえに盛り上がっている雰囲気に呑まれて言い出せず、姉のふりをし挨拶のスピーチをして早々に会場を出て帰途につく。会場を出るとき、姉チィナンが卒業生総代として答辞する音声が会場に流れていた。会場のホテルを出ると姉と同学年だったイン・チャン(チン・ハオ)が追いかけてきた。イン・チャンが美人で優等生だった姉チィナンに恋していたことを知っているチィファは、姉のふりをし続けて、求められるままメールアドレスを交換する。だが、イン・チャンから送られた最初のメッセージを目撃したウェンタオは激昂してチィファのスマホを叩き壊してしまう。チィファは、仕方なくそのことを自分の住所は書かずにイン・チャンに手紙で知らせる。

中学時代イン・チョン(左)はチィファ(ダン・アンシー)から総代答辞の文案と相談されていたほのかな思い出がある (C)2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.

差出人住所のない手紙を受け取ったイン・チャンは、チィナンの実家へ返信を送る。だが、その手紙を最初の開封したのは、チィナンの娘ムームーとチィファの娘サーランだった。亡くなっているチィナンに届いた手紙を不思議思い、返信らしい内容に興味を持った二人はイン・チャンの文面に合わせて返信を創作し投函する。チィファは知らないが、大学時代に再開しチィナンと付き合っていたイン・チャンは、卒業後に『チィナン』を題名に小説を書いていた。同窓会に来たのは妹チィファであることを見抜いていたが、なぜチィナンは来なかったのか。関心を抱きながら文通を楽しもうとするイン・チャン。そうとも知らず、返信を出せないイン・チャンに手紙を書くことが次第に愉しくなっていくチィファ。実家でイン・チャンの手紙を読み返信を書き続けるムームーとサーラン。ちぐはぐな文通が交わされるなかで、イン・チャンとチィナン、チィファの中学時代の思い出が回想されていく…。

 

中国人スタッフも認めた
日本人監督による中国映画

岩井俊二監督自身の小説『ラストレター』をモチーフに、岩井俊二監督が脚本・監督した日本映画と中国映画。日本映画は今年2020年1月に公開されたが、中国版の本作は2年前に撮られている。岩井俊二監督は、単に日本の翻訳映画ではなく、中国人に中国映画として認められ、中国全土で上映される作品に仕上げることにチャレンジし、30年間の時代や生活文化の格差を丁寧に紡ぎ取り映画に映しこんでいる。会話での反応、街の様子の違いや、一人っ子政策の時代にチィナンのDV夫ジャン・チャオ(フー・ゴー)との間にムームーとチェンチェン姉弟を授かり世間から隠れるようにして生きていたであろうその苦労が窺われる演出。登場人物たちの心の機微が浮き上がってくるストーリー展開に惹かれていくとともに、中国のスタッフたちが中国映画と認めるこだわりが香り立つている。チィナンの少女時代と娘ムームーを演じるダン・アンシーと、チィファの少女時代と娘サーランを演じるチャン・ツィフォン二人の演技が少女時代の夢と生きていくことの哀しみを味わい深く心に染みてくる。【遠山清一】

監督・脚本・原作:岩井俊二 2018年/中国/中国語/113分/映倫:G/原題:你好、之华 英題:Last Letter 配給:クロックワークス 2020年9月11日[金]より新宿バルト9ほか全国ロードショー。
公式サイト https://last-letter-c.com/
公式Twitter https://twitter.com/LLCmovie
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*AWARD*
2018年:第55回台湾金馬奨主演女優賞(ジョウ・シュン)・助演女優賞(チャン・ツィフォン)・脚本賞(岩井俊二)ノミネート。