原発事故の記憶と宿題 バトンをどう渡すか FCC放射能問題学習会 『孤塁』に学ぶ

東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から10年が経とうとする中、伝承館や復興にかかわる施設が次々と建設され、被災地の風景は変わりつつある。一方、廃炉や放射性廃棄物処理、汚染水処理、福島原発事故賠償訴訟、各地の原発再稼働の動きなど、現実の課題も存在する。長期にかかる問題も多い中、震災当時を知らない、覚えていないという子どもたちも増えている現状もあり、伝承や継承が課題になってきている。


福島県キリスト教連絡会(FCC)放射能対策室では、放射能問題学習会を2か月に1回程度開催してきた。今年はコロナ禍のため延期されていたが、半年ぶりに9月25日、オンラインで開催された。福島市の大島博幸氏(バプ連盟・福島主のあしあとキリスト教会牧師)が『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(吉田千亜著、岩波書店=写真=)を紹介し、教会の課題として受け止め、参加者で議論した。
同書は、原発事故を経験した双葉町の消防士66人を中心にインタビュー。避難誘導に始まり、原発事故の全貌が分からないまま現場に立ち、決断と行動が迫られた状況を伝える。一人ひとりの消防士の人生、家族のことも描かれ、2020年度講談社本多靖春ノンフィクション賞を受賞した。
大島氏は本書を読み、「震災後9年目にして、今まで光が当たらなかった事実を知らされた。あとがきにある通り、私、私たちがこのバトンをどう受け止め、次に渡すかが求められる」と話した。
FCC主催の被災地ツアーなどで、定期的に浜通りを訪問することで、被災地の変化を感じた。「あったものが無くなり、無かったものがつくられている。しかし心に刻み込まれた様々な思いは、消えていない、と思いました」
9月に双葉町に開館した「東日本大震災・原子力災害 伝承館」を訪問した。「加害の責任の要素が少ないという指摘もあるが、千500点の資料展示のほか、24万点余の資料を所蔵しており、学べることがある、、、、、

2020年11月1日号掲載記事