ミャンマー・クーデター キリスト教界から声明続々 国軍の「衝撃的行動」非難

2月1日に国軍によるクーデターが発生したミャンマー。国軍は国民民主連盟(NLD)が圧勝した昨年11月の総選挙に不正があったとして、アウンサンスーチー国家顧問らNLD関係者を拘束。実権を握ると緊急事態宣言を発令し、市民のインターネット、SNSの利用を制限した。これに対して市民側の抗議活動が広がり、7日には数万に及ぶ大規模デモが繰り広げられた。このクーデターに対し、キリスト教界からも声が上がっている。

ヤンゴン市内。道路を封鎖する兵士に向け、抗議行動のシンボル「三本指サイン」を掲げて抗議の意思を表すミャンマー市民

1865年に設立されたミャンマー・バプテスト連盟は、声明を2月5日に発表。声明は以下の通り。

ミャンマー・バプテスト連盟は、

①聖書の教えに合致した愛、正義、平和および自由を促進する基盤の上に常に堅く立つキリスト教の団体です。
②2021年2月1日、特にこのような我が国を含む全世界が新型コロナウイルス・パンデミックのために大変苦しんでいる時、軍部が全土に非常事態を宣言して国家権力を奪取したことによってもたらされた、民衆のショック、悲しみ、そして失望を共有しています。
③聖書の教えに反するいかなる抑圧的支配システムも拒否します。
④大統領、国家顧問そしてその他すべての現在拘束されている人々を即時かつ無条件に解放することを、切に求めます。
⑤平和、正義、国民和解、非暴力そして人権と尊厳を尊重し、促進する連邦民主制に基づくミャンマー連邦共和国が出現する希望をもって、この声明を発表します。(翻訳:須藤伊知郎氏=西南学院大学神学部教授)

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同国にあるバプテスト系神学校、ミャンマー神学研究所(Myanmar Institute of Theology、1927年創立)は、ミャンマー・バプテスト連盟の声明を受け、独自の声明を6日に発表。同フェイスブックページなどで公開している。声明は以下の通り。
①私たちの学校のテーマ「正義と平和のための連帯」にあるように、ミャンマー神学研究所は、聖書に書かれている神のいのちのことばの光の中で、正義と平和を常に尊重し、支持し、教え、実践する神学研究所です。②私たちは、ミャンマーの人々の側にしっかりと立ちます。彼らは、イエスキリストの道である、正義と平和が広く行われることに対する自らの意思と、誠実な願いを、この国において自由に表明してきました。③私たちは、軍事政権の、すべての不当で強制的、抑圧的、権威主義的な行動を非難します。その行動は人々の力を制御することにつながり、ミャンマーの大多数の人々の意志に反します。④私たちは、ウィンミン大統領とアウンサンスーチー国家顧問を含むすべての拘留された民間人及び指導者たちを直ちに解放することを強く要請します。⑤私たちは市民的不服従を積極的に支援し参加します。私たちの国における正義、平和、和解、人間の尊厳、人権、そして自由を促進するために非暴力的な方法で行われる、ミャンマーの人々のあらゆる運動を支援し参加します。
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カトリック東京大司教区では、ミャンマーのヤンゴン大司教チャールズ・マウン・ボ枢機卿のメッセージ(2月3日)を4日に同サイトで翻訳紹介。同教区は1979年からミャンマーの教会と交流がある。メッセージは、ミャンマー国民、国軍及び将軍、アウンサンスーチー氏、ウィンミン大統領、国際社会へ向けてメッセージを寄せる。
国民には、暴力の犠牲にならず、また非暴力の手段を勧め、コロナ禍に対応する医療従事者を励ました。
国軍には、国軍がかつて民主主義を約束したことを確認し、今回の国軍による「衝撃的な行動」を批判。国民民主連盟(NLD)の代表者らの解放を求めた。
NLD指導者の指導者には、祈りと解放への働きかけを約束し、特にスーチー氏には「あなたの窮状に思いを致し、あなたが再びあなたの民の中を歩き、彼らを元気づける日が来ることを祈ります」と励まし、対話のため、他者の声に耳を傾けることを勧めた。
国際社会には、ミャンマーへの関心を感謝し、「制裁は経済を崩壊させ、何百万人もの人々を貧困に陥れるリスク」があるとし、「当事者たちを和解させることが唯一の道」と勧めた。

在日ミャンマー人ら祈り要請
「元の状態に戻らないように」

在日ミャンマー人や教会、かつてミャンマーに滞在していた日本人からも声が上がっている。
多民族国家であるミャンマーの人々を受け入れ、チン語、カレン語の礼拝を行い、またカチンクリスチャン平和教会を生み出してきた、東京平和教会の大矢直人牧師は、「キリスト者として武力での行動は容認できない。スーチー氏ら軟禁状態にある人々を早く解放してほしい。教会からもデモに参加しているが、軍事政権相手にそれがうまくいくか分からない。1日も早くミャンマーの民主化が行われるように祈ってほしい」。伝道師のドゥムピャ・カーラー氏は「かつて民主化前の軍事政権下で、人々は大変つらい状況に置かれていた。これではまた元の状態に戻ってしまう。決してそうならないように。私もデモに参加し、教会の人たちも参加している。SNSでつながって、毎晩8時には祈り会をしている。共に祈ってほしい」と語った。
つい最近帰国した日本人クリスチャン(帰国後にクーデター)は「数万人規模の抗議デモに軍が発砲することを懸念している。2007年の仏僧が中心となったデモの時は抗議デモが盛り上がり、『発砲もやむなし』と軍の強行手段によるデモ鎮圧があって、多くの人が死んだ。今回もそうなるのではと危惧している。また、今回のデモでさらなる新型コロナの拡大が懸念される。医療に大きな弱さを抱えており、日本では想像できないような危険な状況になることを恐れている」と話す。
▽血が流されることなくこの事態が収束するように、▽神の御前に正しいことがなされるように、▽これまで民主化運動のリーダーとなってきたスーチー氏も高齢になってきているので、今後を担う適切なリーダーたちが立てられ成長していくように、と祈りを要請した。
在日ミャンマー人でバプ連盟・仙川キリスト教会員のアウンダウンラインさんは「自分たちの将来をつぶされた感じで皆がっかりし、希望を失い、怒ってもいる。ミャンマー人の多くはクーデターが起こった日から毎日夕方8時(ミャンマー時間)に15分間、音を鳴らしたり携帯のライトを照らす抗議行動をしている。日本国内でも『ミャンマー軍のやっていることはおかしい』と、政府に働きかけてほしい。ミャンマーのために祈ってほしい」と願った。