『落ち穂を拾う 福祉と福音』 人が善く生きて行くために ミッションからしだね理事長坂岡隆司さん新著

社会福祉法人ミッションからしだね(京都市)理事長の坂岡隆司さんの新刊『落ち穂を拾う 福祉と福音』が、今月発売された。いのちのことば社刊(税込千320円)。2年前から雑誌『百万人の福音』で連載していたエッセイをまとめたものだ。2005年にからしだね館を開設して以来、精神障がい者支援に取り組む中で感じたことを、静かな語り口でつづる。
副題の「福祉と福音」こそ、ミッションからしだねのミッションだ。「本来は福祉と福音は表裏一体のもの」と、坂岡さんは考えている。かつて教会の仲間と共に「聖書が語る福祉をしたい」と立ち上がったことが、今の仕事の原点にある。
「福祉をやっている信仰者であれば誰でもそう思うはずです。イエス様が語られる愛をイエス様のつくられた人に対して実践したい、と」
精神障がい者福祉がまだ緒に就いた頃、病院隔離の時代から社会で共生する時代に変わっていく中でミッションからしだねはスタートした。16年たって、今や精神障がいは誰にとっても他人事ではなくなった。
「昔は人付き合いが苦手でも、家業を継いだり、黙々とできる職人になったり、何とか世の中で生きていく場所があったのです。今はショッピングセンターに人々が雇われて、家業は廃れていく一方です。きまじめで内気な人たちは引きこもらざるを得なくなりました」
現代社会はデジタル化、グローバル化し、成果主義という市場原理が横行して、儲かるかどうかが価値基準になった。からしだね館の年月は、そんな社会からこぼれた人や視野に入れられない人たちと生きる年月だった。

自著を手にする坂岡氏

(坂岡さんは、現代は「ひだの無くなった」社会だと語ります。2021年4月18日号掲載記事