【憲法特集】創り手の「愛」を知り生きたい  宮葉子(文筆家)

憲法には「愛」がある

5年前、弁護士の友人のことば、「憲法にはヨウコさんの言う『愛』があると思う」が気になって、憲法カフェへ顔を出したのが始まりだった。当時、安保法制に反対するデモが国会を取り巻き、若い世代が声を上げた。

憲法には「愛」の文字が一つだけある。前文だ。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」。友人いわく、憲法の愛は、個人の尊重が書かれた13条に凝縮されている。国民に主権のなかった戦時下、国を守るという大義から、人命が失われた。その猛省から、生まれながらにみな尊いという価値観を実現するため、戦後は武力も戦争も放棄し、平和を守ることを選んだ。それが、憲法という日本の新しい「国のかたち」だった。一人一人がかけがえのない存在として、自分らしく生きる。憲法が謳(うた)う人権は、確かに神さまが私たちを見る眼差(まなざ)しのように優しい。

 男女は共に価値あるものとして創られた

ところが、教会が人の集まりという性質上、理想通りにはいかない場合もある。10年間続けている超教派の女性祈り会で、独身者や子どものいない既婚者、伴侶を失った単身者らに出会ってきた。「婦人会」では居心地が悪く、交わりの場がないという嘆きも聞く。教会ではしにくいという話を、率直に分かち合ってくれる。主流派、という意識が自分にはないだろうか。「婦人会」の概念とは何だろうか。教会の中でも、多様性に、より配慮する時代となっているように思う。

個人の尊重は、24条によって、家庭生活の中でも宣言された。夫と妻は、対等なパートナーとして、互いに助け、補い合い、家庭を築くように言う。この24条の原案を作ったのは、GHQの22歳の女性スタッフ、シロタさんだ。10年間、日本で暮らす中で、「女子ども」と一括(くく)りにされ、父や夫の支配下に置かれた女たちの状況を目撃した経験から、女の権利を明確に掲げようと尽力した。

聖書は、女は男のあばら骨から創られ、男は女のかしらだともいう。男尊女卑と誤解されかねない表現は他にもいくつかあるが、当時の社会的背景や前後の文脈、何よりもことばの本質をふまえて読む必要がある。

(この後、宮氏は、女が何のために創られたのか、と語ります。2021年5月2日号掲載記事

宮葉子著 『憲法に「愛」を読む』
いのちのことば社
1,320円税込