香港を覚えての祈祷会で王牧師 台湾で移住者ケア

リンゴ日報の廃刊、多数の議員の辞職など言論の自由が脅かされる香港。国外移住者も増えているが、8月1日施行の香港移民法による制限が懸念されている。そのような中、日本の有志の牧師・信徒ら70人近い参加者による「香港を覚えての祈祷会」が7月12日に開かれた。一昨年来の民主化運動が起こる中で立ち上がった「香港牧師ネットワーク」の中心的人物で、台湾に移住した王少勇牧師が報告し、「香港のことを過去のことと思わないでほしい。関心を持ち続け、人々の目に触れるようにしてほしい」と祈りと行動を要請した。【髙橋良知】
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冒頭では、伽賀由(かが・ゆかり)さん(日本メノナイト帯広教会牧師)がエペソ2章11~22節から奨励。「聖書が語る平和は単に『戦争が無い』という消極的な意味だけではなく、全生活にかかわる積極的な意味がある」と述べた。「人権、就労の回復、自由や平等の保障、個人、組織、国の関係改善、罪の赦しと和解など、平和は多様。神の国に関わることはすべて平和となる。キリストの血によって新しいアイデンティティーを得た私たちは、教派、国、民族、人種をこえた神の家族となる」と勧めた。
王牧師は、アライアンス系の神学校を卒業した後、青年伝道担当牧師として牧会に従事しつつ、地域社会の隣人となるようにと青年たちを励ました。2008年から、タイ北部で宣教し、麻薬依存症の青少年の更生に努める中、政治的制度や機能の腐敗にも直面した。12年には香港で愛国主義教育問題、高速鉄道建設問題が相次ぎ、危機感を抱いた。13年に香港に戻ると、社会運動に関わりつつ、教会では病者や困窮者の訪問活動に力を入れた。ルカ4章を通して包括的な福音理解を深めていた背景もある。
15年に就任した教会では、地域に根差し、地域の中心となる教会というミッションを掲げた。「地域の隣人に仕える中で強く感じたのは、香港の社会制度の根本の問題。教会が政府の不正義に声を上げないならば、どんなに多くの慈善活動をしても対処療法にしかならない」と思った。

(王牧師は、台湾移住者と香港に残る民主派信徒へのケアの必要性を語ります。2021年7月25日号掲載記事