Ⅱ教会の変わらない土台:聖書論から考える教会論

コロナ禍で必要とされるネットリテラシー

以下で「教会の変わらない土台」について考えますが、コロナ禍での教会論を考える際には、ネットリテラシーという問題から考える必要があります。コロナ禍によって私たちとこの社会は、以前にも増してネットへの依存を高めています。ネットが中毒的に私たちを惹(ひ)き付けるのは、それが簡単かつ楽に、早く答えを導き出せるからです。

教会の変わらない土台は言うまでもなく聖書ですが、しかし聖書を土台にし、聖書の御言葉に従って教会形成を為すということは、口で言うほど簡単なことではありません。例えば説教者の場合には、聖書的な説教の成立のために何年にもわたる訓練と学びを積むことが必要とされます。

よって、当然のことながら、聖書を土台として教会形成をする際に何より必要なことは、手間を惜しまず勉強し、時間を使って学ぶことです。殊に聖書や教会、キリスト教に関する事柄については、ネットからインスタントにその情報を得ることに注意深くある必要があります。

「聖書的」の対義語としての「人為的」

聖書を土台として聖書的な教会を形成することが、教会にとっての絶対的な使命です。しかし「聖書的」という言葉の対義語は何でしょうか?それを「非聖書的」とするだけでは足りません。

答えは「人為的」という言葉ではないかと思われます。非聖書的であるとは、聖書以外のものを土台とするということであり、それを突き詰めていくと、そこでは神でないものへの依存と、人間の言葉が神の言葉に成り代わって舵を取る結果を生みますので、最後には人為的なものがその教会の土台になってしまいます。そこでは結局、社会通念や人間の見識等が教会や神を規定し、聖書の教えの上を行くのです。そのような人為的な力学によって教会が動かされる時、神の支配下に置かれるべき教会は、しかしとても人間的な集団となってしまいます。

聖書を教会の土台とするための聖書論の必要性

聖書論とは、言わば聖書の取扱説明書です。聖書を読めば、その読み方や受け取り方は誰にでも自然に理解されるということには必ずしもなりません。また誰でも聖書を読む際には、意識していようがいまいが、それぞれが必ずある前提をもって聖書を読むことになります。よって聖書を教会の土台に据えるためには、聖書そのものの指示に即して体系化された手引きとしての確かな聖書論が必要とされます。

①イエス・キリストの中心性

聖書論には多くの主要点がありますが、ここでは三つのみに絞ってお伝えします。第一のことは、聖書におけるイエス・キリストの中心性です。何より主イエス・キリストご自身が、「わたしについて、モーセの律法と預言者たちの書と詩篇に書いてあることは、すべて成就しなければなりません」(ルカの福音書24章44節)と、旧約聖書には自らのことが書かれてあるのだと語っておられます。私たちが他の事柄に勝って聖書の全書から読み取るべきは、何よりも主イエス・キリストとその福音です。

②聖書の権威とその限界内に留まる

聖書論の主要点の第二第三に当たるのが、聖書の権威の尊重と、聖書の限界内に留まるという聖書の読み方です。例えばヨシュア記では、「モーセの書に記されていることを、ことごとく断固として守り行いなさい。そこから右にも左にも外れず」(ヨシュア記23章6節)と語られて、御言葉の絶対的な権威が主張されています。また申命記では、「私があなたがたに命じることばにつけ加えてはならない。また減らしてはならない。」

(申命記4章2節)とも語られ、聖書が語らないことについて、それ以上に踏み込んだり、勝手な詮索(せんさく)を行うべきではないことが命じられています。

 

教会の現場において様々な現代的な問題や意見が生じ、聖書に基づく判断が問われる際には、必ず歴史によって研磨されてきた聖書論に基づいて御言葉に聞くことが必要とされます。今改めて、個人的・私的かつ流行を追うような神学とは異なる、保守的で伝統的な神学に教会が立つことの重要性を痛感しています。

悔い改めと原点回帰

教会とそこに連なる信仰者にとって、悔い改めは本質的賜物です。すべての教会は、この悔い改めによって絶えず神に立ち帰り、原点回帰を繰り返しつつ歩むことで、キリストの教会となります。

宗教改革も、御言葉と古代教父たちへの原点回帰からもたらされました。神様が送られるすべての危機や変化には、悔い改めへの促しと教育的意味があります。よってコロナ禍も、教会が改革され新しいかたちに変えられていくために与えられたチャレンジとして受け取ることができます。

教会の前進の仕方とは、絶えず悔い改め、聖書の福音の原点に立ち帰りながら、自己改革を促され新しくされて前を向くというあり方です。コロナ禍の未曾有の危機にあっても、教会が為すべきことは、その点で変わりません。

2021年8月15日号掲載記事