いわきから関東、再び仙台へ 私の3.11~10年目の証し 第四部仙台での一週間 序

写真=仙台市街地で。倒れた時計塔。2011年3月

東日本大震災発生後、1週間を福島県いわき市で過ごした私(記者)は、翌週仙台市で当時の所属教会(仙台福音自由教会)の支援活動に合流した。第四部「仙台での一週間」序は、現在と過去に思いをはせる。【高橋良知】
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連載各部のリンク

第一部 3組4人にインタビュー(全8回   1月3・10合併号から3月14日号)
第二部 震災で主に出会った  (全4回   3月21日号から4月11日号)
第三部 いわきでの一週間   (全16回 4月25日号から8月22日号)

2021年8月8日

乗車客数人の夜行バスに乗って仙台に降り立った。10年前、震災後初めて仙台に駆けつけたときも高速バスだったことを思い出した。

早朝に駅前に着くと、西口に長く伸びるアーケードを歩いた。ちょうど仙台七夕の季節だ。通常ならば道行く人たちを包み込む巨大な吹き流しが並ぶが、新型コロナ感染予防のため3分の1に縮小されていた。

市街西側の広瀬川をわたると宮城県美術館がある。学生時代に住んでいたアパートも近くにあり、美術館の庭は良い気分転換の場所だった。

この美術館について、2019年に突如移転計画が報道されたが、県民運動を経て20年に移転は撤回された。この運動の中で同美術館の建築、美術的価値とともに、環境との調和や市民の記憶に注目が集まった。

建造物の解体か保存かという問題は、宮城県を含む津波被害沿岸部で数多く議論された問題だった。震災の記憶を残すと同時に、「凄惨な記憶がフラッシュバックする」という痛みへの配慮も必要だった。過去の体験の何を伝えるべきか、どう継承するか、何が再生、復興か。そのプロセスから学べることは多いはずだ。

 

2011年3月18日

東京に帰る支援者の車で、いわき市を深夜に出発した(連載三部第8回参照)。常磐道の地面はでこぼこしており、電灯も消えていた。反対車線に自衛隊、消防車、救援車が続々と走っていた。

 

3月19日

デボーション誌「マナ」のこの日の個所はⅠヨハネ5章1~12節。解説では「口で告白しても、それが外部に表現されなければ、その告白の真実性が疑問視されます」とあった。現在進行形で被災地の窮乏があり、支援活動が展開されている。いったん関東の実家に戻るが、仙台で始まる支援活動に合流しようと気持ちは焦っていた。

当時の日本福音自由教会協議会会長の服部真光さん(名古屋西福音自由教会牧師・当時)に連絡した。名古屋や関東からの救援隊第一陣の車はすでに満員。名古屋を出発する第二陣に空きがあると。さすがに関東から名古屋にいくのは厳しい。

東北新幹線は不通だった。テレビで順次表示される交通情報を見て、仙台行きの高速バスを調べたが、どれも満員。あきらめかけたとき、郡山行きのバスが見つかった。郡山から乗り換えで仙台まで行ける。早速予約を取り(後に仙台行きのバスを再予約)、支援に合流することを仙台教会に伝えた。壊れていた携帯電話を直し、スーパーで支援物資を調達した。店の棚はすかすかで関東でも物資が不足していた。

この日、関東の母教会で月例青年会があった。母教会には東北出身者が多く、青年の半数が東北出身者だった。「両親や親族が被災している」という不安とともに、「関東にはガスも電気も水も食料もある。真剣に東北を思えない」と葛藤する姿もあった。

 

3月20日

「マナ」の個所はⅡヨハネ4~11節。「初めから聞いているとおり、愛のうちに歩むこと」(6節)とある。半年前の2010年9月に日本福音自由教会60周年記念大会があった。そのテーマが「初めの愛から」。そのときに顔と顔を合わせた諸教会は、東北に思いを寄せたことだろう。母教会でも教会員が持ち寄った支援物資を集め、東北へ向かう関東地区発の救援隊のトラックに積み込んだ。

 

3月21日

「マナ」はⅢヨハネ5~12節。「悪を見ならわないで、善を見ならいなさい」(11節)とあった。

朝、仙台行きのバスに並んだ。バスはガタガタ揺れながら東北自動車道を走った。道沿いにはブルーシートが掛かった家々が見えた。宮城インターを降りると、車中の乗客は一斉に窓の外を見た。

駅からは、いくつかのビルの看板が傾いているのが見えた。西に伸びるアーケードに人々は行き交っていたが、古い建物は傾き、地面にひび割れがあったり、時計塔が倒れるなどしていた。

数週間前まで住んでいたアパートの無事を確かめると、大学校舎の様子を見に行った。中はあちこちにひび割れがあった。廊下には、バツ印がついたOA機器や棚が並んでいた。掲示板には安否確認のリストがあり、確認済みはマーカーでチェックされていた。

第四部は仙台福音自由教会の働きを中心に振り返る。 (つづく)

2021年8月29日号掲載記事