写真=遺品から見つかったグーテンベルグ聖書の複製をもつ吉住さん

コロナ禍による感染対策、孤独の深まり…。遺品整理の現場にはどのような影響があるのだろうか。株式会社エスコートランナー代表取締役の吉住聖さんを訪ねた。

参考→ 人生のどこかで救いを求め触れていた…? 遺品の中から聖書、讃美歌 神様はこの人を見放してはいなかった 2020年01月05・12日号

埼玉県桶川市郊外、プレハブの倉庫兼事務所には、棚に家電家具、日用品が並ぶ。これは誰かの遺品や生前整理された品だ。

それだけではなく、応接のソファ、事務戸棚、額縁、置時計や飾り小物類など事務所の用品についても、「待っていると必要なものが与えられる」と吉住さんは話す。清掃のほか、リサイクルの業務も展開している。「オルガンを教会に提供したこともある。必要なものを、うまく教会とマッチングできるといいですね」

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コロナ禍で、葬儀後の「後片付け」の業務は減っている。「コロナ禍の影響で先送りできるものは後回しに、という傾向があるようです」

一方で、孤独死した人の部屋の「特殊清掃」といった案件は、必要があり、件数は変わらない。「報道によると、コロナ禍の中での不審死の4割がコロナ感染だったともいわれる。現場では死因は伝えられないこともあり、当初は感染の不安はあった。ただ現実、作業は警察の取り調べなどを経て数日後なので、感染リスクは減っている。高機能のマスクを使い気を付けた。依頼者との見積もり相談などの打ち合わせにも緊張しました」

従来から孤独、孤立が増えているのを感じる。「家族がいても、子どもが独立したり、伴侶を亡くしたり、あるいは独身だったり。施設入所を拒否して慣れ親しんだ自宅で暮らす人もいる。冬場は風呂場やトイレなどで突然死するヒートショックのリスクがあります」

数か月、半年たって死亡が確認されるということがある。人づきあいがなかったり、新聞をとっていなかったりすると、見つかりづらい。「日ごろからの横のつながり、フォローが必要。ただ、今はコロナ禍で訪問も難しい。教会につながっている人でも、対面での礼拝や集会がなくなり、安否が確認できないこともあるのでは。牧師だけではなく、様々な人のつながりが大切です」

他人との接点がなく、他人への関心がなくなると、自分への関心もなくなる。これをセルフネグレクトという。「風呂も入らず、ゴミをためてしまう。食べ物が無く、お酒の空き缶だらけとか。ゴミの中で亡くなっていた、という現場もありました」

(この後「遺品整理は遺族の意思を」と吉住さんは語ります。2022年2月13日号掲載記事)