髙本氏

 

長らく諸外国に比べ例の少なかった日本での臓器移植が近年増加傾向だ。日本のキリスト教会の中でも慎重な意見がある中、改めて本格的な議論が始まった。「脳死臓器移植を聖書からどう考えるか」と題した日本キリスト者医科連盟(JCMA)「脳死臓器移植」勉強会が2月12日、東京・新宿区の早稲田奉仕園でオンライン配信を交えて開催された。実際に手術に携わったキリスト者の医師と、牧師、生命倫理、病院チャプレンが発題し、課題を議論した。【高橋良知】

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JCMAでは、2021年の第72回総会(沖縄)の講演で脳死・臓器移植問題を扱い(講演内容は同機関誌『医学と福音』2022年1月号掲載)、「脳死臓器移植」勉強会を立ち上げ、継続的な学びと議論が始まった。

日本における心臓移植手術は1968年に札幌で初めて試みられたが、一連のプロセスに問題を残した。移植への反対意見が強まり、97年に法整備がされた後の、99年まで実施されなかった。

同勉強会代表の髙本眞一氏(賛育会病院院長、東京大学名誉教授・心臓外科学)は、東京大学での責任者として2002年から09年まで9例の心臓移植を実施した。全国的には10年に法改正で制限が緩和されて以降、年々移植例が増え、19年には84例(成人67、小児17)となった。20年以降はコロナ禍のため減少した。移植希望者は成人小児合わせて約千人いるが、待機時間が4年以上となる現状がある。

エフェソ(エペソ)2章10、4章15~1節、1コリント12章23~27、30、31節などのキリストの体の共同体の記述を踏まえ、「命も臓器も、もともと神が創造されたものであり、神のもの。人間へお互いに助け合うことを要求しているのではないか。脳死後に他の人間に臓器を譲ることを、神は認めるのではないか」と語った。善きサマリア人のたとえ、Ⅰコリント13章も引用し、「信仰以上に愛が大事ではないか」と述べた。

脳死は人工呼吸器でサポートされながらも、全脳、脳幹部が壊死となっており、1~2週間で心臓死となることが認められている。

脳死臓器移植の反対意見としての「脳死は本当の死ではない」「移植を希望するのは自己中心主義」「ドナー(臓器提供者)と患者の人格的な関係が築けない」「臓器売買の可能性がある」といった声については、「重病患者の非常に苦しい状態をよく理解してほしい。脳死臓器移植が有効である場合には、キリスト教として、愛の行動をすべきではないか」と勧めた。

(この後議論の参加者からは、ドナーとしての新興的な決断、社会的な合意形成の必要性、死が断絶でなく社会とつながる道に、などの意見が出されます。2022年3月13日号掲載記事)

問い合わせはshinzo-ishoku@japan-cma.net

写真上=Zoomで全国とつなぎ、応答する。左から髙本氏、生命倫理が専門の木村利人氏、司会でJCMA議長の西脇洸一氏、牧師の秋山徹氏

Zoomで参加した病院チャプレン山崎正幸氏