黒川家族

 

福島県南相馬市を拠点に、沿岸の相双(相馬郡、双葉郡)地域の人々と教会を励ます超教派宣教団体「サーブクリスチャンミニストリー」が昨年から始まった。5月にはクリスチャンが出会い、心を合わせる場として「So!So! Worship! 福島県相双地域賛美集会」を開催した(5月29日号既報)。同ミニストリーを始めた黒川康敬さん、Kiiさん夫婦はどのようにして福島に来たか。「サーブ」(仕える)に込められた意味とは何か。【高橋良知】

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「東北とのつながり」を振り返ったとき、2人がまず挙げたのは、Kiiさんの経験だ。Kiiさんは韓国出身。日本でデザインを学びに留学していた。海外宣教への関心から東京基督教大学(TCU)への進学も考えていた。ところが2011年の東日本大震災、原発事故のため、韓国に帰ることになった。

帰りの飛行機の中、浮かんだのは日本で出会った人々の顔だった。「私は日本を愛していた。日本での召しを神様から導かれ、翌週日本に戻りました」。いつかTCUへ行くことも願いつつ、一般の会社でデザイナーとして働き始めた。

黒川さんは韓国語への興味から07年から教会に通い、Kiiさんとも知り合っていたが、しばらく教会を離れていた。ところが若年男性にはまれな乳がんを発症、12年に手術を経験したことから、信仰を回復し、自分の人生を神に捧げる決意をした。Kiiさんとの結婚後、13年にTCUに入学した。

在学中から東京・足立区の単立神の家族主イエス・キリスト教会で奉仕し、伝道師となってからは青少年を担当した。この中で家庭に青年たちを招くスタイルを定着させた。

宣教師への導きを、18年に参加した韓国の宣教大会の中で受け、子どもたち2人とともに、19年から家族で米国留学した。海外を見る中で、改めて日本での宣教の召しを確信した。

ある日、福島県で奉仕する神学校同期との電話をきっかけに、福島県のことが心に迫った。夫婦で祈り続ける中で、シオンの回復を語るゼカリヤ8章1~3節が、被災地での働きの確信となった。

コロナ禍の影響で、韓国籍のKiiさんのビザの取得は遅れた。当初の予定を1学期分伸ばし、21年6月に帰国したが、恩恵はあった。「私たちとしては少しでも早く現地に行きたかったが、福島県で移住者支援金給付が始まる時期に重なったのです」

3か月間は南相馬市の日本同盟基督教団原町キリスト福音教会で暮らし、住居を探した。家庭に青年を招くスタイルのための拠点を願っていた。住居探しは困難をきわめたが、これも最終的に最適な場所が見つかった。
このような献身への経緯、留学時代や福島での働きについて、ブログhttp://krojp.com/やホームページhttp://serveministry.org/などで随時発信している。

 

若い世代の励ましが必要

 

キッズミニストリーの様子

 

相双地域のプロテスタント教会をまわった印象は、高齢化が進んでいたということ。独自の教会形成の前に、まず既存の教会をサポートする働きに従事し、デザインやIT補助、説教奉仕などを随時引き受けている。青年を励ますため週一回の超教派集会を始めた。教派に配慮して聖書の学びはせず、賛美と祈りに特化している。

大切にしているのは「自分たちの願いではなく、神様主体の働き」だ。4月からは日曜午後にキッズミニストリーを開始した。これは災害救援NGOオペレーション・ブレッシング・ジャパンが南相馬市で継続していた学童が母体だ。「震災後、地域の人々との信頼関係をもとに継続していた。そこに日曜学校を加えることができた。すでに備えられた働き、神様の計画に遣わされたのです」
この働きには、仙台で活動する宣教団体OMから小野光葉さんが協力。短期宣教で訪れる様々なクリスチャンも助けになる。「保護者の方々とも交流ができ、世の中の価値観とは違うクリスチャンの生き方を共有できます」

デザインの働きは結婚後に「デザイン工房午後3:30」https://gogosanjihan.com/として活動している。「単にかっこいいデザインではなく、何のため、誰に向けて、といったことをしっかり考えていくことが大事。教会の中にデザインの文化が広がってほしい」と願っている。

「将来もし導かれて教会が形成できた場合も『サーブ』の理念で、地域の教会の働きに仕える教会として歩みたい」と言う。特に願っているのは、新規に移住するクリスチャン、開拓伝道を始める働き手だ。南相馬市では、新規事業、起業を受け入れる体制もあり、若い人が移住しているという。

地域の若い人たちとのつながりも持ち始めている。サーフィンの名所で、サーファーとも出会った。黒川さん自身もサーフィンを始めようかとも考えている。地域の中高生の自殺率の高さも心配だ。「中高生に寄り添う働きをするクリスチャンの講演や、若者を励ます音楽ライブをしてもらえたら」とも願っている。「様々なアイデアを吟味して、神様の働きを見出したい」と話す。

クリスチャン新聞web版掲載記事)