「シロアムの園」公文和子氏 講演

8月11日、ケニアにある障がい児支援施設「シロアムの園」の「新拠点完成記念サンクス講演会」が北海道のグレースコミュニティを会場に、オンライン併用で行われた。直前の感染拡大により、会場は定員人数を抑える形となったが、ライブ配信により全国から170人以上が参加。「シロアムの園」の代表公文和子さんが、「子どもたちの笑顔の裏にあるもの 笑顔の向こう側にあるもの」と題して講演した。

1時間余りを笑顔で語った公文さん


2015年にわずか6人から始まった「シロアムの園」の働きは、現在専門的な医療や福祉、教育の提供及び実践者の育成活動、地域づくりなどに及び、20人以上のスタッフで運営されている。その活動の原点は、小児科医として働いていた公文さんが、クライド君という障がいをもつ10代の少年の「笑顔」と、「この子と友だちになりたい」という自らの「気持ち」に出会ったことにある。「その笑顔の向こう側にある困難を感じられるようになりたいと、自身の立ち位置の変化を感じた瞬間でした」
障がいを悪霊の仕業と考えるなど、誤った認識や偏見のいまだ満ちているアフリカで重い障がいをもつということは、日本とは比べられないほどの困難を伴う。国のインフラ整備など到底期待できない。そんな多くの困難を目の当たりにしつつも、子どもたちとその家族の笑顔を前にし、彼らの笑顔を見守れる社会をつくりたいと考えるに至った。現地のスタッフも「神様が子どもたちをどれほど愛しているか、すべてを通して表したいと願っています」

会場で流された「シロアムの園」紹介動画より

ケアを必要とする子どもたちは増え続けているものの、受け入れ人数を増やすことは単純なことではない。今回の新拠点建設も、奇跡続きの実現ではあったが、水、電気の整備など、いまだ建設途中であるのも事実である。「でも、無いものを数えてもきりがない。無いからこそ、今あるものの恵みを感じます」
子どもたちとその家族がシロアムの園を出てからも笑顔でいられるよう、サービスの改善やスタッフの能力開発、就労機会を作るなど、具体的な必要はたくさんある。また、障がいに対する正しい知識を広める必要性も感じている。キリスト教国であるケニアでは、日曜日には家族そろって教会に行くことが一般的だが、障がいをもつ子どもたちの家族は、教会に行くことを諦めることが少なくないことが最近の調査でわかった。外出時の子どもへのケアが難しいという理由もあるが、ケニア社会では医療従事者も含めまだまだ障がいへの理解が乏しく、それゆえに公共の場で、非難などネガティブな反応が少なくないからだ。
最後に「土地が与えられたこと、建築の完成は確かに素晴らしいけれども、今後新しい場所でなにをするのか考え、皆さんと歩みたい」と語り、素晴らしい笑顔の「シロアムの園」の子どもとスタッフの写真を見せて、公文さんも嬉しそうな笑顔で講演を閉じた。
「シロアムの園」については、公文さんの著書『グッド・モーニング・トゥ・ユー! ケニアで障がいのある子どもたちと生きる』(いのちのことば社)に詳しい。(いのちのことば社出版部・山田雪聖)

2022年9月11日号掲載記事)