10月16日号1面:ウクライナ4州「併合」の衝撃 主の介入を祈って 船越真人・美貴宣教師
9月30日、ロシア・プーチン大統領は、ウクライナ南東部4州(ドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソン)の「併合」を一方的に宣言した。現地の状況、祈りの課題をウクライナ・オデッサで宣教する船越真人・美貴宣教師夫妻に挙げてもらった。
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船越宣教師夫妻
戦時下のウクライナは四つの地域に区分することができる。第一は、ロシアによって占領されている地域。これらの地域の住民がどのような扱いを受けているのかは、将来これらの地域が解放された時に明らかになるだろう。最近も大量の住民虐殺が明らかになった。第二は、現在、激戦地となっている地域。東部のドンバス地方、南部のヘルソン、ニコラエフ東部がこれに当たる。第三は、ロシア軍が進軍すれば次の激戦地・占領地になる危険性がある地域で、オデッサはこれに当たる。
そして第四は、比較的安全で平穏な状態が定着している地域。私たちはこの第四地域に避難していたが、現在、第二地域から多くの避難民たちが第三地域であるオデッサに避難してきている現状と、そのオデッサが包囲・占領される危険性が低くなっている現状を見て、今オデッサで避難民を援助しつつ宣教を前進させる時だと理解し、戻った。オデッサ教会をベースに、オデッサへの避難者、ニコラエフ北部の六つの村の避難民家族、ウクライナ兵士、教育が必要な子どもたちを対象にした四つの「HOPEプロジェクト」を行っている。
プーチンは、部分的にしか占領できていない東部4州を2014年の「クリミア併合」と同じ方式で強制的にロシアに併合すると宣言した。武力によって国境の変更を試みる「併合」は明らかな国際法違反であり、「併合」を正当化するために行われた「住民投票」は完全に非合法であり、占領下で行われた投票は、まったく民意を反映したものではない。
さらに、ロシア憲法では、ロシアの領土を他国に割譲・返還することは禁じられており、ロシアがいったん上記の4州をロシア領としてしまえば、それらの領土をウクライナに返還する交渉さえも不可能となる(ウクライナは併合そのものを認めてないので、返還の必要性も認めていないことになる)。
つまり、ウクライナが「返還」を実現するためには、武力でそれを奪還するしかないことになる。そして、ウクライナは必ずそうするだろう。そうなれば、ロシアは、「自国の領土が脅威にさらされている」とし、「自国領の防衛」の名目で核兵器の使用を現実的なオプションとする。ロシアは絶対に避けるべきだったラインを超えてしまった。四州の男性たちはただちに「ロシア兵」として徴兵され、ウクライナ軍との戦いの最前線に送られる。ウクライナ人がウクライナ人と戦い、殺し合うという常軌を逸した構図が生み出される。
戦況はさらに混迷を深める。ウクライナ軍が通常兵器で優勢になればなるほど、プーチンが核兵器使用に踏み切る可能性が上昇することも強く懸念される。原発に対する攻撃という形での核攻撃の脅威も残る。ロシア国民への動員は、戦争を短期終結させる意思がないことの表れだとも見られている。不透明で緊迫した状況が続いており、本当に主のご介入を必要としている。ぜひ、お祈りください。
ウクライナの市民、兵士たち、そしてロシアの兵士たちの血がこれ以上流されることがないように。早くロシア軍が自ら撤退することによって戦争が収束するように。プーチンが決して核を使用することがないように。この危機的な状況の中にあっても信者が一致して宣教がさらに前進するように。そしてHOPEプロジェクトが豊かに用いられるように。
(クリスチャン新聞web版掲載記事