安保、性、道徳…日常の議論に

日本福音同盟(JEA)宣教委員会宣教研究部門では、次世代の社会問題に関する意識調査を、1月10日から行っている。次世代の範囲は定めがたいものがあるが、10代から40代までの青年、ことに福音派のキリスト者を対象として、OBを含めたKGK(キリスト者学生会)、CCC(日本キャンパス・クルセード・フォー・クライスト)、国際ナビゲーターなどの青年宣教団体を通じて無記名回答にて回答をお願いしている。調査結果は9月に開催される第7回日本伝道会議(岐阜県)で配布する資料として使用する。

調査は、次世代にとって関心のある社会問題の内容、次世代の国や社会との関りについての姿勢、戦争や安全保障に対する考え方、義務教育期間に受けた道徳教育とその影響についての受け止め方、またジェンダーについての意識と対応について、幅広い内容に及んでいる。サンプル数としては、400~500件を目指しているが、現段階で集まってきている70件ほどのデーターから、既に興味深い傾向も見えてきている(右図は調査結果の一部)。

もちろん、あくまでも参考程度に過ぎないが、内閣府や民間企業が一般の青年に対して行っている同じような調査結果と比べてみると、そこには今のキリスト教会の姿を考えさせるような回答も多い。

たとえば国を愛する気持ちについて、今回の調査では強いと答えたのは全体の約27%、一般の内閣府の調べでは約52%と差がある。一方、性の多様性について、どれだけのことを知っているのか、用語の意味理解については、一般の民間企業の調査結果とほとんど変わらない傾向にある。そして同性愛についての受け止め方、捉え方の観点については、福音派とは言え、全面的に受け入れる立場(8%)から全面的に拒否する立場(7%)、その中間の立場と分散した。

今回の調査は、実際の所、大雑把な意識調査である。たとえば改憲についても、加憲をどう考えるかという実際的な形での憲法改正について踏み込んで調査しているわけではない。また、国家の安全保障を取り上げてはいるが、今より注目されている、個人の生存、生活、尊厳を脅かす種々の脅威、つまり人間の安全保障に関する調査にまでは及んでいない。

ただこうした調査の目的は、福音派が微妙なテーマであるとして、あまり議論してこなかった分野について、もはや一部の論客の議論とせず、避けて通ることのできない議論を日常において活発にしていく材料を提示するものである。また一つの立場を強行的に論じる時代が終わり、これだけ現に考え方のばらつきがあることを踏まえた、より理性的、客観的な議論を期待するためのものである。
2月10日まで以下のアドレスで、回答を受け付けている。https://forms.gle/H9N4LS6e4EEVDKmn6e4EEVDKmn6

(記・福井誠=JEA宣教研究部門主任研究員)

2023年02月05日号掲載記事)