国際的な宣教団体「オープン・ドアーズ」が、世界のキリスト教徒への迫害状況を調査した報告書「ワールド・ウォッチ・リスト2023」が公表された。世界のクリスチャン人口の7人に1人が深刻な迫害下にあり、それらの国の数は76か国。30年前に調査を開始した当時の40か国からほぼ倍増している。公表された分析と迫害の全体的な傾向を掲載する。

アフリカのサハラ以南で暴力が深刻化

ジハード(聖戦)を主張するイスラム主義者により、西アフリカと中央アフリカの国々は不安定になっている。すべての国々が過激派の暴力に崩壊する危険にさらされ、サハラ以南の26か国が高レベルの迫害に直面している。そのうち半数は、さまざまな迫害の要素の中でも暴力のスコアが「極めて高い」範囲にある。
アフリカ大陸全体にシャリーア(イスラム法)を拡大しようとする彼らの活動により、キリスト教徒は、自宅から避難キャンプへ、あるいは他の国へ、常に移動することを余儀なくされている。この強制移住にともない、特にキリスト教徒の女性は性的な攻撃の対象になりやすく、男性は命を落とす可能性が高い。

中国の弾圧モデルは独裁主義国家全体に

中国における、特に経済面での明らかな成功は、世界中の多くの指導者にとって魅力的である。不満分子を統制する一方で、成長と繁栄が約束されているため、イデオロギーの背景を問わず、世界中の指導者の関心を引き起こしている。
スリランカ、ミャンマー、マレーシアといった多様な国々が、中央アジアの独裁的国家同様の道を歩んでいる。これらの国では、キリスト教の存在そのものが政権に刺さったとげのようであり、ましてや、その活動家が、市民を統制しようとする政権の試みに反対する声を上げようものなら、なおさらである。その声に対して、独裁者は大きな圧力をかけ、逮捕、教会取り壊し、登録抹消を行う。

 

中東の教会は減少 今も抑圧下に

イスラム国の台頭や、キリスト教を完全に一掃しようとする過激派の試みから、教会は立ち直れずにいる。差別と抑圧が経済的衰退と相まって、教会は特に若い人たちが希望を失いつつある。中東の地中海沿岸地域(レバノン、シリア、イラク、イスラエル/パレスチナ自治区、ヨルダン)では、収奪、差別、迫害により、キリスト教コミュニティーが縮小している。
イスラム国の登場以来、イラクやシリアのクリスチャン、特に若い人は、高い失業率と継続的な敵意に直面し、海外移住を欲している。移住が増えると、結果として教会は弱体化し、次世代の指導者と家族を奪われ、さらに疎外される。キリスト教に改宗した人々は、依然、家族や地域社会からの強い圧力に直面し続けている。

ラテンアメリカでは状況が悪化

腐敗し非効率的な政府が、犯罪集団の活動を容易にし、民族指導者が迫害を引き起こしている。特にそれは、農村部や先住民の間で顕著である。ニカラグア、キューバ、ベネズエラでは、政府の反対派とみなされる人々に対して抑圧が強まっている。特にニカラグアでは、教会指導者に対する共産主義者の弾圧が、この一年でますます目につくようになった。

2023年03月12日号   01面掲載記事)