【連載】教会実務を考える⑭飛地境内地―牧師館は宗教施設?
河野 優 石神井福音教会協力教師 前日本同盟基督教団法人事務主事
「飛地境内地(とびちけいだいち)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは主要な礼拝施設から離れた場所にあって宗教活動のために用いられている宗教施設を指す言葉である。例えばA教会がB伝道所を開設し、B伝道所の宣教のために礼拝施設を取得した場合、当該施設はA教会の飛地境内地と呼ばれる。主要な施設から離れているとしても、宗教活動が行われていれば同じく境内地・境内建物である。
飛地境内地にかかわる事例をひとつ見てみよう。ある教会が牧師館として中古住宅を購入した。その物件は教会から車で15分ほどの場所にあった。所轄庁に非課税申請手続きをしたところ、教会から一定程度離れていることもあり、境内地とは認められないと言われた。さて、どのような対応が考えられるだろうか。
まず法律の規定を確認しておこう。宗教法人法第3条では境内建物・境内地の定義がなされている。それは「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」(同第2条)という宗教団体としての目的に必要な、当該宗教法人に固有の建物・土地であること。境内建物の具体的な名称の一つに「教職舎」(同第3条1号)、つまり牧師館が挙げられている。牧師館は間違いなく境内建物である。
にもかかわらず、この事例では教会から牧師館の「距離」を理由として「認められない」というのだ。法律に距離規定などあるのかと思い、とりあえず自分でも少し調べてみた。すると『教会事務navi』(佐藤丈史、いのちのことば社)で、所轄庁により判断が異なることを前提としつつ、飛地境内地で境内地境内建物証明が交付される基準の例として次のような一文が記されていた。——「教会から徒歩5~6分のところにあって、教会にすぐかけつけられる牧師館」——たしかにそのような基準を耳にしたことがあるし、すぐに駆け付けられる距離というのも根拠があるようにも思われるが、果たしてどれほどの妥当性をもつのだろうか。
当時の私は知識も経験も浅かったこともあり、役所が言うのだからそういうものなのだろう、課税判断は受け入れざるを得ないのだろうと考えていた。しかし、教会では専門家の助言を得て次の2点について行政側に説明を試みた。一つは会堂と牧師館が離れている事情について、もう一つは牧師館も教会活動のために必須の施設として一体的に運用していること。具体的には牧師館にも教会掲示板を設置し、祈祷会や役員会など教会活動の一部をその牧師館でも行っているということ。
以上の説明を丁寧にすることで担当者に理解を求め、無事に境内地・境内建物であると確認され、非課税となった。
宣教のために必要不可欠か
この事例では無事に非課税になったものの、結局のところ不動産にかかわる非課税判断には幅があるというのが現状である。しかし、不動産取得税(地方税法第73条の4)および固定資産税(同第348条)について、「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第三条に規定する境内建物及び境内地」に対してはその税を「課することができない」と規定されている。非課税にできるのではなく、課することが「できない」とされている点については十分に考えられるべきではないだろうか。
同じく牧師館を教会とは別の場所に所有している教会で、距離が近くとも別の理由で非課税にならなかった事例もある。特に牧師館は外観上も使用実態も一般の住宅と異ならないことから、教会から離れた牧師館を所有する場合には、行政担当者がそれらを正確に理解できるように説明することが求められる。そこでは教会が牧師館を単なる教職者の住居として扱っているのか、それとも宣教のために必要不可欠な教会施設として扱っているのかが明らかにされるだろう。
( 2023年04月30日号 03面掲載記事)