連載 JCE7を聞く⑫終 宣言文は「祈り」に 赤坂泉氏(JCE7宣言文作成委員会委員長)
第七回日本伝道会議(JCE7)直前となる、本連載最終回は、JCE7東海宣言「『おわり』から『はじめる』私たちの祈り」の作成委員会メンバーらに作成の経緯や今後の期待について聞いた。【高橋良知】
これまでの記事
☆① 共通のゴールを再確認 小平牧生氏=実行委員長 2023年06月04日号
☆② 中西雅裕プログラム局長 より本質に向かう機会に 2023年06月11日号
☆③ 福井誠 プログラム局員 皆の意見を反映した内容に 2023年06月18日号
☆④ 羽鳥頼和 開催地委員長 「東海」を宣教モデルとして 地域協力の土壌をさらに
☆⑤ 「S&L」共同代表 内山勝さん 賜物を結ぶ出会いの場を 2023年07月09日号
☆⑥ プロジェクト「世代循環」「過渡期こそ本質を」 2023年07月16日号
☆⑦ プロジェクト「日本社会と宣教」「ディアスポラ」 2023年07月30日号
☆⑧ プロジェクト「ファミリーミニストリー・サミット」「平和研究会」 2023年08月06日号
☆⑨ 宣教協力を考える会 教団教派の新パートナー、開拓者アセスメント&開拓支援センター 2023年08月13日号
☆⑩ 学びの場を各地に すべてのまちに教会を 2023年09月03日号
☆⑪ 多次元の聖書文脈探訪 終末への包括的な課題 2023年09月10日号
宣言文の最終版はホームページ(URLjcenet.org/jce7/2023/05/16/)で公開。
「1『おわり』を見つめることができるように」という冒頭の祈りに始まり、「~を越えた宣教協力を『はじめる』ことができるように」の形式で、「2立場」「3教派」「4地域」「5文化」について、多様な内容を含む祈りが続き、「6『おわり』から『はじめる』ことができるように」の祈りにまとめられる。宣言文作成委員会委員長の赤坂泉氏は、「祈りの全文はボリュームがあるので、六つに小分けした。毎週、毎日祈っていただければ」と勧める。
「第五回までの宣言文を尊重しつつ、新たな枠組みで宣言文を作成した。作成委員会が大所高所から語るのではなく、『草の根』の協力で作成することを目ざした」と言う。
前回第六回では宣言文はなかったが、各プロジェクトの提言をまとめた。講演を受け身で聞くだけではなく、参加者同士でテーブルトークをした。そのような姿勢を今回の宣言文でも継承した。
作成委員会は男女、年齢、教派も異なる11人からなる。そのうち赤坂氏と30~40代の3人が作業部会として宣言文案を作成し、委員会で議論した。「作業部会で素案を作った。委員会で話し合う中、ある委員が、『これは祈りですね』と述べたことがきっかけになり、多くの教会で共有できる『祈り』として宣言文が着地しました」
一年前大会で第一次案を発表してホームページでも公開した。各地域大会でも声を集めた。「具体的な提言を含め、様々な意見が集まった。すべてを文章に盛り込むことはできないが、その熱意は反映したと思う。総花的になってしまったり、神様の御心から離れないように、聖書的、神学的に吟味していきました」
教会で使い続けて
一次案で「私たち教会が、主の前に忠実ではなかった歴史」とだけあったものを最終案では「教派を越えた協力のなかで、戦争に加担し、天皇を神とする偶像崇拝を行い、アジア諸国においても神社参拝を強要する国家に与(くみ)するという罪を犯しました」(「3.教派を越えた~」)と明確にした。赤坂氏は「フィードバックを受けて取り入れた。日本福音同盟の存在意義にかかわる内容。従来の宣言文でも詳しく述べられている」と言う。
「(「4.地域を越えた」には「置かれた地域の歴史、文化、慣習を理解し、人々の生活を重んじながら、多様な人々の心と現実に届くことばを語る」「地域の文化に福音の息吹を吹き込み、主にある新しい文化の創出」とある。赤坂氏は「教会が地域に向けた新しい葬儀文化を提示していくことなどが例になる」と語った。
従来の宣言文でも環境破壊への言及はあったが、今回は「この第7回日本伝道会議を契機として、全教会的に環境保全の取り組みが具体化するように」と積極的に表現された。
赤坂氏は「宣言文を読むだけではわかりづらい部分もある。背景にある問題意識やさらなる提案などを知っていただくためにも、ぜひ解説文を読んでほしい」と勧める。本文と解説は『第7回日本伝道会議宣教ガイド2023』(=写真右上=日本福音同盟宣教委員会宣教研究部門編、いのちのことば社)に掲載 宣言文の英訳のほか、16か国語の試訳がJCE7のホームページで公開されている。「国内にも、様々な外国のルーツの人がいる。共に宣教を担う助けになればと願います」
作業部会、作成委員から
〇近藤愛哉=保守バプ・盛岡聖書バプテスト教会牧師
:それぞれ置かれている場、直面している事柄は違う。一つの問題についても様々な意見がある。どんな祈りならば共通して心動かされるものになるか、作業部会でたえず確認しあった。この祈りを祈り続けるとともに、それぞれ置かれた場、立場でアップデートしてもらいたい。今回の宣言文では「越える」が繰り返される。越えなくてはならない現状がある。自教会主義、自教団主義を越えて心から協力していきたい。私は東日本大震災の被災地で、その経験をしてきた。JCE7では、各自が越えるべき壁は何かを考え、具体的な宣教協力になればと願う。
〇青木義紀=同盟基督・和泉福音教会牧師
:超教派の伝道会議なので、福音派の多くの教会と信仰者がともに祈ることができる言葉や表現を心掛けた。しかしそれは、作成に当たった私たち自身を除外した他人事の祈りではなく、反対に私たちの偏狭な信仰や神学に固執した祈りでもなく、両者が両立する祈りの言葉を心掛けた。取り上げた祈りの課題は、過去の伝道会議の宣言文を踏まえている点で伝統的であり、同時に現代の諸課題をも可能な限り網羅的に扱った点で現代的だ。人によって、興味関心の向く祈りやすいテーマと、興味関心の薄い、どう祈ったらよいかもわからないテーマがあると思う。前者の場合、その課題に取り組む中で、祈りを自分なりにますます深めていってほしいし、後者の場合、今回の宣言文(祈り)を通して、自身の祈りの視野と射程を広げていってもらえたらと思う。今回の宣言文(祈り)は、伝道会議の期間だけのものではなく、そこから始まって多くの人々に祈り続けてもらいたい、祈り続ける中で具体的な伝道の結実が、この世界の各地で見られるようになることを期待する。
〇塚本良樹=キリスト者学生会副総主事:
JCE7に参加するすべての人が同意できる表現になるよう工夫するとともに、「尖った」内容もある。これは現代の教会にとって大事なこととして盛り込んだ。この時代の危機とともに、希望についてもしっかり言葉にした。たとえば外国にルーツがある人々が増えていることは課題もあるが、少子高齢化が進む日本の教会にとって希望でもある。JCE7では2日目に説教を担当する。宣言の内容と重なる部分もあるが、御言葉から、この時代に必要なことを提言も含めてメッセージさせていただきたい。
〇西岡義行(作成委員)=東京聖書学院教授:
宣言文作成のプロセスは神学的専門家から発出されたのではなく、ヒアリングや対話によったのだと言える。違った考えを持つ人たちが、同じ問題を、別の角度から考え、対話する中から見えてくる真実に向き合う課程が言語化され、祈りへと導かれた。この宣言文が一部の人がつくったものだと思われては残念だ。ぜひ教会、牧師会、神学校、などで対話のために活用され、何が今問われているかに向き合い、祈りへと導かれることを願いたい。
(2023年09月17日号 04面掲載記事)