NPО法人光希(ひき)屋(家)が運営する、ひきこもりや不登校の人たちが安心して集える居場所「ふらっとカフェ(以下「ふらっと」)」=秋田県大仙市大曲須和町=が10周年を迎えた。光希屋(家)は11月14日、記念イベントとしてフォーラム「発達特性と職場の適応、その工夫」を、大曲須和町のこぶし児童館で開催した。(11月19日号で関連記事)【中田 朗】

小島健一さん
ロザリン・ヨンさん

「ふらっと」は、光希屋(家)代表でマレーシア人のロザリン・ヨンさん(ルーテル同胞・大曲ルーテル同胞教会客員)の発案で、2013年9月23日にオープンした。
当日は、午前10時から開始。午前中はパステルアート、プラモデル作り、展覧会など、利用者による自由活動があり、午後1時からは、藤井淳一さんによる「はなうたミニライブ」が開かれた。藤井さんは「ふらっと」創設当時からの利用者で、現在はピアスタッフ(かつてひきこもりの当事者だった支援者)も務める。
ライブでは、オリジナル曲を中心に披露。「ボクノウタ」では、作詞を担当したピアスタッフの柳原優さんとコラボし、「泣いて涙が枯れ果てて 強く生きたいと願った日も 今時が止まればいいと 一人つぶやいた日も ずっと悩みながら過ごしてきた」と、 ひきこもりだった頃の心情を歌い上げた。

当事者を交えての座談会

続いてロザリンさんが挨拶。「ひきこもりは、通常のレールから外れているように見えるが、私の見解では人生の途中で立ち止まっているように思える。立ち止まる期間は人により異なり、短い人、長い人がいる。しかし、疲れが癒え、迷いが解け、決意が固まり、興味を持つことがあれば、再び前進しようとする。その時にサポートと応援が大切。『ふらっと』はこれからも変わらぬ信念で、利用者と支援者の皆様と共に歩んでいきます」と話した。
「ふらっと」の働きを支援してきた4人に感謝状も贈られた。片桐進さん(ルーテル同胞・大曲ルーテル同胞教会牧師)は、「マレーシアから雪の多い秋田に来てくださり、10年間風雪に耐えて来られたロザリンさんに、私からも心から感謝したい」、栗林正子さん(同教会員、「ふらっと」の物件の大家)は、「『ふらっと』のお母さんとして、これからもご飯作りを頑張りたい」、栗林次美さん(元大仙市長)は「市長の頃からこの問題を真正面から取り組めないかと思っていた。力を合わせて事業の継続を考えたい」、佐々木清哉さん(元大仙市子ども・若者総合相談センター長)は、「異国の地秋田に来て、ひきこもりの支援をするという意気込み、決意に感動し、行政としても支援していこうとの気持ちが強かった。理解ある市長の下で実行部隊として支えられた」と挨拶した。

ふらっと利用者によるコラージュ

フォーラムでは、弁護士の小島健一さん(鳥飼総合法律事務所)と「ふらっと」の利用者やピアスタッフ、ロザリンさんを交えてのフリートークで進行した。自身も発達障害の特性が強いと自認する小島さんは、「障害」を「特性」と捉え、「医学的、医療的観点でなく人々の関係性の中でどのように成長し、発達していくか、という考えのほうが強い」と語る。
「メモを取りながら話を聞くのが苦手」、「人とコミュニケーションを取るのが苦手」、「仕事はしているが、みんなと同じように生きていけない。『ふらっと』があるから何とか続いている」といった利用者の悩みに対しては、「発達障害として特別扱いをするよりも、できるようになる工夫をみんなで話し合って共有し、やり方を変えることでみんなが安全に、効率よくできていく。そのことが職場改善にもつながり、イノベーションの機会にもなる」と応答。
「発達特性は、知能とは全く関係がない。コミュニケーションの形が違うだけで、できないのではない。大切なことは、自分の発達特性についてどれだけ理解しているかだ。また、自分の可能性にチャレンジしていくという考えのほうがいい。発達特性の強い人はこだわり、不安が強く、割り切りと絞り込みが苦手。失敗した時のことを考えやすい。ゼロか百かだけでなく、30も50もあると考えると落ちつける」とアドバイスした。

パステルアート、プラモデルづくりの活動が行われた
ミニライブで。左から藤井さん、柳原さん