日本福音主義神学会東部部会秋期公開研究会から

日本福音主義神学会東部部会は、2023年年間テーマ「キリストにある平和と和解」のもと、春期に「キリストにある平和」(2023年7月16、30日、8月6日号参照)、秋期に「キリストにある和解」(11月27日開催)のテーマで公開研究会を開いた。秋期は藤原淳賀氏 (青山学院大学地球社会共生学部教授、宗教主任)、長下部穣氏(特非ワールド・ビジョン・ジャパン信仰と開発担当、東京基督教大学・立教大学非常勤講師)が講演した。【高橋良知】

長下部穣氏(特非ワールド・ビジョン・ジャパン信仰と開発担当、東京基督教大学・立教大学非常勤講師)

 異なる共同体の中で神学伝統が生かせる

長下部氏は「神学の受肉としての和解の実践と葛藤:修復的正義を事例として」と題して語った。死刑制度に関心を持つ中で、修復的正義(RJ)を知った。「被害者の癒やしを大切にし、死刑の是非ではなく犯罪が起こらない社会をつくるという点。平和を待つだけでなく実際につくる点。神学者・犯罪学者・法律家など分野を超えた様々なアクターがいっしょに議論している点、が新鮮だった」と言う。

近年では宗教の「終焉(しゅうえん)」「衰退」などを言う一方向の世俗化論は退潮し、宗教の社会的意義・貢献が見直されているという。その一例としてRJを紹介した。

RJは、メノナイトの信仰者が立ち上げた更生プログラムを、犯罪学者ハワード・ゼアが理論化・体系化したものだ。「司法のゴールを和解にするという点で画期的だった」と言う。英国ではRJを司法システムに取り入れた。英国国教会にも「神学の受肉」として受け入れられた。

だが近年はRJの形骸化も指摘されている。長下部氏は、クリスチャンのRJ活動家への聞き取りで、「クリスチャンでなければ完全にRJを理解できない」という見解を集めた。だがそこに公共圏における課題を見いだした。それは、「犯罪者とそうでない人の区別をしない包括的理解がある一方で、キリスト者とそうでない人は分ける。それは二重基準のように見える」という点だ。

この課題を乗り越えるため、「倫理的再帰性」の概念を挙げた、、、、、、、

2024年01月07・14日号   05面掲載記事)

参考

【神学 聖書の平和論】殉教死、忠実な証しによる教会の戦い 山﨑ランサム和彦氏 2023年07月30日号

【神学 聖書の平和論】殉教死、忠実な証しによる教会の戦い 山﨑ランサム和彦氏

南野浩則氏「旧約聖書の平和論」研究発表 日本福音主義神学会東部部会 春期研究会発表より② 2023年08月06日号