地元出自の若き新市長の誕生にベテラン議員らも当初は暖かく出迎えたが… (C)広島ホームテレビ

この数年、広島県北部に位置し広島市と島根県境に挟まれた安芸高田市(あきたかたし)の石丸伸二市長と市議会議員らとの確執が、市長のSNS発信や公式ウェブサイトの市議会ライブ配信によって衆目を集めてきた。2020年8月に当選した新人市長と議会との深まり行く溝の当初(1年半)の経緯を追った広島ホームテレビの50分番組「#つぶやき市長と議会のオキテ~そこに“議論”はあるか~」(第28回プログレス賞奨励賞受賞)の未公開映像とその後の取材を加えて再構成した本作は、自分が暮らしている地方政治を“自分事”として関心を持つよう誘っているドキュメンタリーといえる。

京都大学経済学部卒業後、メガバンクの為替アナリストしてアメリカ大陸の主要9か国を担当していた政治未経験の石丸氏が、故郷の安芸高田市長選挙に立候補したきっかけは19年に起きた河井克行衆院議員夫妻による大規模買収事件に関係した前市長らの辞職。市長選に立候補したのは副市長一人で、無選挙当選の可能性高いと聞き銀行を退職し、<「この先も世界で一番住みたい」と思えるまちへ」>をスローガンに、三つの公約(・政治再建:政治の「わかる化」・都市開発:将来を見据えた投資・産業創出:リモートを活かした人材の確保)を掲げて出馬し大差で当選した。

是々非々で人口減少が進む安芸高田市の政治改革の道筋を示そうとした石丸伸二市長 (C)広島ホームテレビ

根回し政治は“害悪”として公の議場での議論を動画配信。市長自身もツイッターで政策や議会の動向について発信し政治再建を図っていく。だが、市長初めての議会で市長の演説中に30分以上もいびきをかいて居眠りする議員がいた。その事実をツイートしたことから居眠り議員を擁護する議員らとの市長と間に確執が生じ、両者の溝は深まる…。

加速する少子高齢化に強い危機感を持って政策と展望を説いてきた石丸市長。任期終了を前に8月の市長選挙には立候補せず、7月の東京都知事宣教への出馬を正式表明した。政治のわかる化は、市民が政治を自分事とする覚悟を認識させてくれる。【遠山清一】

監督:岡森吉宏 2024年/109分/日本/ドキュメンタリー/ 配給:きろくびと 2024年5月25日[土]よりポレポレ東中野、角川シネマ有楽町ほか全国順次公開。
公式サイト https://tsubuyaki-mayor.com
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