「池袋に祝福を」開拓から9年

多様な人が行き交う東京・池袋。池袋駅は1日平均265万人、世界で3番目に多く使用されている。ここで福音を伝えるのが、西口から徒歩5分、ビルの一室にある東京ライフチャーチだ。2015年、都心で若者に福音を届るため、久留米バイブルフェローシップから12人のチームが派遣され開拓が始められた。

多様な礼拝者 日本への関心を

開拓から9年、現在では80人ほどが礼拝に集う。アクセスの良さが、多くの人が集う一因だろう。共同主任牧師のバックホルツ夫妻は、夫のグラントさんが米国、妻の美穂さんが日本生まれで、フランスで出会い結婚をしている。教会も国際色豊かで、礼拝は日英バイリンガルで行われ、英語のホームページもあり、海外からの旅行者や駐在の人、国際結婚したカップル、また留学先で信仰をもった帰国者などが集まってくる。出席者の60%が海外に関係がある人たちだという。
「本当にいろんな人が来ます。日本人のような外見であってもそうでなかったり、日本語のみ話す日本人だったり、日本と他国籍のミックスだったり。いろいろな人がいるから、様々な人が存在しやすいのかもしれません。ここに新しい日本の姿が見えると思います」
バイリンガル礼拝の通訳は、ヘッドホンなどを用いず、通訳者も講壇横に立ち、交互にされる形だ。自分の言語が第二言語と感じないようにと配慮すると同時に、今は日本語ができない人も、いずれ日本語や日本語文化を理解してほしいと願う。この教会のビジョンの一つである、日本人へのミニストリーに関わってほしいからだ。

東京ライフチャーチの信徒ら
バックホルツ牧師夫妻

スモールグループで信仰を養い

開拓3年目に転機があった。2年続けて受洗者がいなかったのだ。「完成度の高い礼拝や人を喜ばせるプログラムを提供するよりも、人にみ言葉を届け、育てていくという、最も基礎的な部分を大切にしないと人は救われていかないと学びました」。そして、「神につながり、神の民につながり、神の働きにつながるため」、スモールグループに重点を置くように。
「若い人も多く来ますが、信仰も若い。彼らを育てていくために、信仰の基礎を学ぶ場所、何でも言える場所であり、言葉だけではないケアができるのがスモールグループです。神につながること、神の民につながること、また、そこで誰かに仕えたり、友人を招いたりという伝道の機会をつくることができると思っています」

地域に仕える「大人食堂」

スモールグループで訓練され、教会内だけでなく、池袋のこの地域に仕えていきたい、その思いはコロナ禍で始められた「大人食堂」でも具現化されている。コロナで緊急事態宣言が出された頃に、60年以上池袋でホームレス支援をしているNPO法人TENOHA
SI「てのはし」を紹介している報道番組をみたことがきっかけだった。それまで食事の列には男性ばかりだったのが20、30代ばかりではなく、子づれの女性が並んでいる様子を見て、「私たちにもできる、できるはず、しなければならない」と一歩を踏み出した。
「てのはし」からアドバイスを得て、月に一度40食を配るところからのスタートだった。教会から6人ほどで出かけた。「手のひらにびっしょり汗をかいて、あんなに緊張したのは久しぶりでした」と美穂さんは言う。
今は70食を配布している。「配るのはほぼ一瞬」。購入した弁当とトラクトを袋に入れたり、整理券を配ったりと1時間のセッティングの時間に、賛美をしたり証ししたりして関係を作る。「弁当を配って終わりにしたくなかった。私たちは専門的な援助はできない。でも私たちは霊的なニーズに応えることができると思っています」

拠点となる会堂取得を祈り求めて

この地域に根ざして仕えていきたい。その思いは熱い。そのためにも今は会堂の必要性を強く覚えている。池袋がある豊島区は都内でも人口密度が最も高い地域だ。開拓して9年間で会堂を10回ほど移動してきた。イタリアンレストランだったり、日本語学校だったり、ビルの一室だったり。池袋で開拓された教会もいくつかあるが、地代が高くスペースも限られているため、会堂を求めて他地域へ移る教会も多い。しかし東京ライフチャーチは「池袋に留まりたい」。教会の働きを進めるためにも会堂の必要性を感じている。池袋で会堂を見つけることは至難のわざだ。しかし「会堂を購入することは、教会員一人ひとりが、最前線で神が働かれるのを見ること」と神に期待する。「建物は祝福でもあり、呪いにもなります。与えられた場所を自分たちのものとして独占していたら祝福とはなりません」。池袋に神の祝福をさらに分かち合うため、祈り、動き始めている。

大人食堂。月に1回、70食を公園で配布している

2024年06月23日号 08面掲載記事)