台湾巨匠傑作選2024 (C)2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.

台湾ニューシネマの先導者ワン・トン(王童)監督の代表的作品「台湾近代史三部作」が7月20日開幕の「台湾巨匠傑作選2024~台湾映画の傑物ワン・トン(王童)監督と台湾ニューシネマの監督たち~」にて一挙公開上映される。三部作のうち「バナナパラダイス」(1989年作品)は4年前の「台湾巨匠傑作選2020」で上映されていたが、「無言の丘」(1992年作品)と「村と爆弾」(1987年作品)は今回が日本での劇場初公開。

「台湾近代史三部作」の第一作目「村と爆弾」は、日本が1895年(明治28)に日清戦争の結果、清朝から割譲された台湾統治時代の末期、1944年(昭和19)春の太平洋戦争中の台湾が舞台。牛の糞尿を瞼に塗り手繰り目の病気を装って徴兵逃れをした小作人のアファとコウヅエ兄弟の家族と村人たちの暮らしぶりを兄弟が耕す畑の案山子の視点から植民地統治のもとにある不条理さや悲哀がテンポよくコミカルに描かれている。

植民地施政の不条理と
悲哀をコミカルに演出

貧しい小作人だがアファ(チャン・ボーチョウ)とコウヅエ(ジョウ・シェンリー)兄弟の一家は大家族。母親は耳が遠く、夫は早くに戦死している。アファ夫妻と弟のコウヅエ夫妻の子どもたちは合わせて10人にもなる。アファの妹・水仙(リン・メイジャオ)は、結婚式の翌日に夫を徴兵されてすぐに戦死し、悲しみのあまり正気を失った。兄弟でどうにか耕してきた畑も、アファの妹が嫁いだ地主(コー・ジュンション)が日本からやってきて畑を精糖会社に売ることになったという。翻弄され、先行きが見えなくなった兄弟だが、その畑に米軍の空襲で落とされた不発弾が見つかった。子どもたちが爆弾の破片を拾い集めて学校に持っていくと褒美に靴下がもらえることから、この不発弾を天皇に献上すれば報奨金が出るだろうと口車に乗せられた兄弟。村の巡査の案内で兄弟が荷車に乗せて隣町の日本人巡査がいる駐在所に届けるため出発したが…。

貧しい小作人の畑に落ちた米軍の不発弾。天皇に献上すれば褒美をもらえるのでは、と口車に乗せられて喜ぶ村人たち。 (C)2015 Taiwan Film and Audiovisual Institute. All rights reserved.

三部作二作目の「バナナパラダイス」は、中国共産党軍と国民党軍の内戦で国民党軍とともに台湾に渡ってきた青年が、台湾での暮らしに夢破れた末に、他人に成りすましてでも生きていこうとする人生を描く。三作目の「無言の丘」では、日本の統治時代に金鉱発掘ブームに沸いた大正末期から昭和初期の時代に、うだつの上がらない小作人をやめて日本人が管理するある金鉱山にやってきた二人の青年の労働者生活をとおして当時の台湾人の生き様を見つめている。ワン監督の三部作には、どんな苦境や逆境のあって、弱い立場やはかなさを覚えつつも、何かの光を見つけようとする力強い人間の本質的な面を感じさせてくれる。

「台湾巨匠傑作選2024」では、ワン・トン監督の三部作およびプロデュース作品「熱帯魚」(1995年)のほかホウ・シャオシェン監督(10作品)、ツァイ・ミンリャン監督(3作品)、チェン・クンホウ監督(1作品)、エドワード・ヤン監督(1作品)、オリヴィエ・アサイヤス監督(1作品)ら台湾ニューシネマの監督作品とともに20作品が劇場公開される。
【遠山清一】

監督:ワン・トン 1987年/98分/台湾/デジタルリマスター版/原題:稻草人、英題:Strawman 配給:オリオフィルムズ 2024年7月20日[金]より「台湾巨匠傑作選2024 台湾映画の傑物ワン・トン(王童)監督と台湾ニューシネマの監督たち」新宿K’s cinemaほか全国順次公開。
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