中村氏

日本同盟基督教団「教会と国家」委員会は「2024年オンライン平和祈祷会」を8月9日に開催。新潟聖書学院前院長で、今年の4月に『増補改訂版 日本キリスト教宣教史』を出版した中村敏氏が「戦争と分断の時代に生きるキリスト者の使命―ウクライナ戦争・パレスチナ問題を中心に―」と題して講演した。以下はその要約。

―旧約時代においては、選民であるイスラエル民族は絶えず他の諸民族と「聖戦」の名のもとに戦い、それは中世の十字軍に受け継がれ、これが多くの戦争における大義名分となってきた。しかしイエスは「平和をつくる者は幸いです」「剣を取る者はみな剣で滅びます」と説いた。この教えは、戦争放棄を宣言した日本の憲法第九条に結びついていることを覚えたい。

ロシアはウクライナを、本来不可分の兄弟国家として、ロシアに敵対するNATO加盟に断固反対したことが、軍事侵攻の要因である。20世紀の一時期独立を果たしたウクライナも、その誇りにかけてロシアの支配を受けることはできない。さらに地政学的に見て、ウクライナは西と東を結ぶ重要な通路であり、東西のパワーバランスの要となっている。故に西側もウクライナを支援する。

日本はウクライナ支援に関して、すでにNATOの準加盟国と言っていい役割を果たしている。岸田首相は、覇権主義的な行動を強める中国を念頭に、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と述べたが、中国とは長い交流の歴史がある。ここはやはり、日本国憲法、特に九条に謳(うた)われている平和の理念に立ち返って、考えるべきである。

イスラエルとハマスの戦争は、パレスチナ問題。1947年に国連はパレスチナ分割決議を採択し、48年にイスラエルが建国。アラブ諸国との間に中東戦争が勃発し、大量のパレスチナ難民が発生した。イスラエルへの抵抗運動組織として誕生したのが「ハマス」。その目的はイスラエルの破壊とパレスチナ国家の樹立。今回のハマスによる奇襲攻撃の背景には、ガザ地区にパレスチナ人を追いやり、長年抑圧し続けてきたイスラエルへの怒りと、トランプ政権により進められた「アブラハム合意」により、イスラエルとアラブ諸国が急接近したことへのハマスの危機感がある。

イスラエルもハマスも、パレスチナを自分たちだけに約束された相続地とみなし、対立してきた。特にエルサレムを巡っては、、、、、

2024年09月01日号 05面掲載記事)