「礼拝中心の人生」チャレンジ受けて 米子福音ルーテル教会
鳥取県米子市は、伯備富士と呼ばれる大山やラムサール条約に登録されている中海などの大自然に囲まれている。一方、日常生活に必要な買い物の場所や機関もそろっている商業都市。つまり住みやすい町だ。
米子福音ルーテル教会も街中にありつつ少し足を伸ばせば皆生温泉、中海、日本海と羨ましいロケーションである。「県外から転勤して住む人も多く、外部からも入りやすい」と話すのは牧師の松村秀樹さん、緑さん夫妻。
教会は1965年にノルウエーの宣教団体によって始まった西日本福音ルーテル教会米子伝道所として設立した。秀樹さんは日本人牧師としては5人目。赴任して29年目になる。
大切にしていることがいくつかある。そのひとつは「笑い」。「私たちが赴任した頃はもっとフォーマルな印象の教会でした。明るくて笑い合う、にぎやかな雰囲気にしたかったのです」
初めは説教で面白いことを話すと、信徒さんから真顔で「説教のとき笑ってもいいんですか?」と聞かれたとか。信徒と牧師、お互いにだんだん慣れていき、教会の雰囲気もずいぶん変わったそうだ。
今では教会の柱でもある、子どもたちへのアプローチも変わった。「当時来ていた子たちは、自分の意思ではなく大人に言われて来ていました。教会学校もありましたが、子どもの心に響いているように見えなかった。中高生になったら離れてしまいそうだと思っていました」
そんなとき、子ども向けの教会プログラムMEBIG(メビック)に出会う。「遊びながら子どもたちの信仰を育てていく。楽しく、笑いながら、まじめに神様を礼拝していこうと切り替えました」
礼拝はいくつか種類があり、小学生以下、小学生、中高生、大人向け礼拝。プラス土曜礼拝。それぞれ自分にあった礼拝に出席している。
さらに平日の夕方には子どもの祈り会、中高生の祈り会もある(もちろん大人用も)。遊んで祈って、終わってから勉強していく子もいる。
かなりのハードスケジュールなのでは?と聞くと「よく休むようにしています」との返答。「月曜は絶対お休み。これは死守です。ドライブが好きなので二人で大山に行ってランチしたり、夜は星を見にいったり。ここは山も海も近く食べ物もおいしいですしね」。上手にリラックスできているようで、聞いているこちらもうれしい。
賛美も大切なひとつだ。「いろいろな人との出会いで賛美が盛んになり、ゴスペルのチームもつくりました。クリスチャンのシンガー岩渕まことさん、ゴスペルシンガーのラニー・ラッカーさん。そして、福原タカヨシさん。最近では4人姉弟の賛美ユニット、ルア・ワーシップとの出会いが大きかったです。彼らが教会でコンサートをしてくれたとき『礼拝は人生、人生は礼拝』と話してくれて、それいいなあと思って。今年の教会の標語にしちゃいました(笑)」
「礼拝で人が救われてほしい」
礼拝を中心とした人生にしたい、これが教会の新しいチャレンジとなる。
「わたしは以前、礼拝で人が救われるのは難しいと思っていました。実際、バイブルクラスなどに出るうちにイエス様を信じる人が多かったのです。でも今は礼拝で人が救われてほしい、クリスチャンではない人がたくさん礼拝に来てほしい、そう願っているのです」
2011年に新しい会堂を建てた。礼拝堂は、体育館のような、ライブハウスのような、そしてキッチンのような場所にしようと考えた。「みんなで遊んだり、歌ったり楽器を演奏したり、食べたりできる場になりました」
食事をするときは礼拝堂のパイプ椅子をサーッとどけて、テーブルを出して食卓にする。遊ぶときもライブのときもサーッと。礼拝堂は軽やかに姿を変える。
松村さん夫妻は、先に緑さんが信仰を持ち、秀樹さんも時々教会へ。元は理系畑で「証明できないことは信じられない」というところからスタートした。「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」(ヨハネ8章32節、新共同訳)を読み、自分は自由だと思っていたのに、真理を知ったら自由になるとはどういうことか。賭けてみようと洗礼を受け、徐々に信仰が育っていく。勤務していた会社の同僚たちはいわゆるエリート。でも皆、幸せそうに見えない。その人たちに伝えたいな、伝えるなら牧師になろう、と献身の道へ。いま66歳。そろそろ世代交代も考えている。次の代を育てるサポートもしていきたい。
「これまで私たちの息子を含む4人の献身者が起こされました。教会から巣立った人たちがさまざまな地で主の働きを進めている。本当にうれしいことです。次世代の救いと成長を願う私たちにとっては大きな喜びです」
大切にしていることをいくつも教えてもらった。大切なことがたくさんあるけれど、重たそうなこだわりがない。真理を知って自由になったから、こんなに軽やかなのだろうと思う。
【田口祐子】
西日本福音ルーテル教会・米子福音ルーテル教会
〒683―0842 鳥取県米子市三本松1-2-27
TEL. 0859-33-2757
(2024年10月27日号 01面掲載記事)